相続税申告書提出方法を解説|申告書の記入方法と必要な書類とは?
相続税は、相続開始後10ヶ月以内に税務署に申告しなければなりません。相続人には、その間に必要書類を全て揃え、それを元に申告書を作成して税務署に提出する義務があります。これらの準備をすべて相続人だけで行うことは非常に難しいため、遺産相続に強い弁護士や税理士などの専門家に協力を仰ぐとよいでしょう。
相続税申告をするときに知っておきたいこと
専門家でもない限り、相続税の申告に手慣れている人はほぼいません。身内を亡くした悲しみを引きずりながら申告の準備を進めることは、素人にとって大変骨が折れる作業です。遺産相続に強い弁護士や税理士などの専門家の力を上手に借りながら、相続税申告の準備を始めましょう。
相続税は期限内に正確に申告すべし!
相続税を申告するには役所や法務局、銀行などに足を運び、たくさんの書類を集めなければなりません。相続税の申告漏れがあると、忘れた頃に税務調査が入る可能性もあります。相続税申告書の作成はくれぐれも慎重に行いましょう。
相続税申告の流れとは
相続手続き開始から相続税を申告するまでの大きな流れは以下のとおりです。
この流れに沿って相続税を申告するための準備を進めましょう。
- 財産関係や身分に関する必要書類を集める
- 集めた書類を元に相続税申告書を作成する
- 完成した相続税申告書を税務署へ提出
相続税の納入が必要なケースとは
相続税を納める必要があるのは、遺産総額が基礎控除額を超える場合です。基礎控除額は以下の計算式で計算されます。
また、配偶者に対する税額軽減の特例を受ける場合は、たとえ申告する税額が特例により0円になっても相続税の申告は必要となるので注意しましょう。
申告すべき期間
相続税申告期間は相続人が相続を知った日(被相続人の死亡日)の翌日から10ヶ月と定められています。申告書の提出先は、被相続人が死亡したときに住んでいた住所を管轄している税務署です。期限内に申告しなければ、加算税などのペナルティが課される場合もあります。
申告漏れがあると税務調査が入るおそれも
毎年税務調査対象となる申告のうち、申告漏れが見つかるケースは95%以上もあります。その大半は、書類記入時にミスをしてしまったケースや相続人が誰も知らなかった隠し財産が判明するケースです。税務調査は相続人全員がされるわけではありませんが、申告手続き完了後もしばらくは用心しておきましょう。
税務調査のターゲットになるのはこんな人
税務調査のターゲットになるのは、主に以下のケースに該当する人です。
- 遺産総額がおおむね3億円以上ある人
- 所得税の申告が年間2000万円を超えて「財産及び債務の明細書」を提出した人
- 評価額が5000万円を超える不動産を持っている人
その他、申告内容がいい加減、つじつまが合あわない点があるなどの場合も税務調査の対象となります。
正直に答えるのがベスト
税務署の職員は、家の調度品やゴルフクラブをチェックして申告漏れの財産があるかどうかを確認します。さらに、メモ・タオル・カレンダーなどの備品に銀行などの店名がないかどうかをさりげなく確認することで、隠れた銀行口座が発見されることもあります。相手は税務調査のプロなので、ごまかしは一切通用しません。申告内容にやましい点がなければ、職員から何を聞かれても正直にはっきり答えることがベストです。
相続税申告の準備は遺産相続に強い弁護士・税理士に相談を
相続税申告書は枚数も多く、記入の仕方も複雑です。税務署から申告書記入に関する手引きも提供されていますが、弁護士や税理士などからのアドバイスを受けながら準備を進めましょう。
具体的な申告書の内容を見てみよう
相続税の申告書は全部で15の様式があります。相続した財産の種類によって、また相続人の立場や属性によって必要な書類は異なります。それぞれどのような書類があるのか見ていきましょう。
申告書の様式はどのようになっている?
相続税の申告書には第1表から第15表までの多くの様式がありますが、そのうち相続税の申告書は第1表のみで、あとは計算書や明細書などの添付書類になっています。すべてを記入する必要はなく、相続人全員に該当するものがない書類は提出不要です。
申告書はどの様式から記入すればよい?
申告書を記入する際、守るべき順番があります。その順番は以下の通りです。(※1)
順番 | 様式 | 内容 |
---|---|---|
1 | 第9表 | 生命保険金などの明細書 |
2 | 第10表 | 退職手当金などの明細書 |
3 | 第11表の付表 | 小規模宅地等、特定計画山林または特定事業用資産についての課税価格の計算明細書 |
第11の2表 | 相続時精算課税適用財産の明細書、相続時精算課税分の贈与税額控除額の計算書 | |
4 | 第11表 | 相続税がかかる財産の明細書 |
5 | 第12表 | 納税猶予の適用を受ける特例農地等の明細書 |
6 | 第13表 | 債務及び葬式費用の明細書 |
7 | 第14表 | 純資産価額に加算される暦年課税 |
8 | 第15表 | 相続財産の種類別価額表 |
9 | 第4表 | 相続税額の加算金額の計算書・暦年課税分の贈与税額控除額の計算書 |
10 | 第5表 | 配偶者の税額軽減額の計算書 |
11 | 第6表 | 未成年者控除額・障害者控除額の計算書 |
12 | 第7表 | 相次相続控除額の計算書 |
13 | 第8表 | 外国税額控除額・農地等納税猶予税額の計算書 |
14 | 第1表 | 相続税の申告書 |
15 | 第2表 | 相続税の総額の計算書 |
16 | 第3表 | 財産を取得した人のうちに農業相続人がいる場合の各人の算出税額の計算書 |
申告書の作成は素人には困難…
申告書の作成は、自力でやろうと思えば最寄りの税務署で配布している申告書の書き方に関する手引きを見ながら自力でもできます。しかし、決められた期日までにミスや漏れのないように申告書を提出するには、やはりプロである税理士に申告書の作成を依頼する方が確実でしょう。
押印は認印でよい
税務署に提出する書類だから、実印のほうがよいかと思われるかもしれませんが、申告書へ押印するときは認印でよいとされています。しかし、本人が申告書の内容を確認して間違いなく押印したことを示したいときは、実印を押すほうがベターです。
申告書以外に必要な書類がある
申告書以外にも、申告内容の根拠となる書類を申告書と併せて提出しなければなりません。その添付書類とは、財産関係の書類と身分関係の書類の2種類に分かれます。
必要書類①:相続財産を評価するために必要な書類
まず、相続財産の総額を算出するために「財産に関する書類」と「債務に関する書類」の2種類の書類を揃えることが必要です。それぞれどんなものがあるのかについて見ていきましょう。
財産に関する書類
財産に関する書類とは、相続や遺贈によって相続人が取得した財産の価値、数量、所在地などを調べるための書類のことを言います。具体的には以下のような書類が必要です。
不動産関係 | 登記事項証明書、固定資産税の評価証明書、実測図など |
---|---|
株式関係 | 銘柄別一覧表、売買報告書、株主名簿など |
預貯金関係 | 残高証明書、預金証書、預貯金通帳 |
その他 | その他金品についての明細、証明書等 |
債務に関する書類
債務に関するとは、被相続人の債務や金額を知るための書類です。具体的には以下のようなものがあります。
借入金関係 | 金銭消費貸借契約書、借入金残高証明書 |
---|---|
未払金関係 | 請求書・領収書 |
公租公課関係 | 課税通知書、納付書、潤確定申告書の控 |
葬式費用関係 | 葬式費用出納帳、領収書 |
必要書類②:身分関係の書類
次に、被相続人や相続人の身分やその関係を証明する書類も必要となります。具体的に必要となる書類は次のとおりです。
全員必要な書類
被相続人・相続人の身分や立場に関係なく必要となる書類は以下の6つです。
- 被相続人の戸籍・除籍謄本、戸籍の附票
- 被相続人の住民票の除票
- 相続人全員の戸籍謄本、戸籍の附票
- 相続人全員の住民票
- 相続人全員の印鑑証明書
- 相続人全員の個人番号カードまたは通知カードと運転免許証などの身分証明書のコピー
個々の状況により必要になる書類
- 被相続人の略歴
- 相続人全員の職業と電話番号
- 介護保険の被保険者証などのコピー
- 遺言書のコピー(あれば)
- 遺産分割協議書のコピー(あれば)
- 障害者手帳のコピー(相続人が障害者の場合)
- 特別代理人の専任申立書(相続人が未成年の場合)
- 相続放棄申述の証明書(相続放棄のある場合)
以上のように、相続税を申告する際には数多くの書類が必要となります。これらをすべて被相続人が亡くなってから期日までに揃えようとすると、かなりの時間や手間がかかります。早めに遺産相続に強い弁護士や税理士などの専門家に相談して、プロに任せられるところはお任せするほうがミスなく申告できるでしょう。
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