貸地や貸家、貸マンション・アパートを持っていた場合、相続財産の評価方法とは?

マンション

相続財産の対象となる不動産には、被相続人が住んでいた住居や使用していた土地だけでなく第三者に貸していた土地や住居も含まれます。貸宅地や貸アパート・マンションの場合、借主に借地権があって使用に制限がかかるため評価額が下がります。そのため、相続税を節税するにはいかに入居率を上げるかがポイントです。

相続財産の評価

被相続人が所有している財産がどう評価されるかによって、相続分や相続税が左右されます。財産の中でも土地や建物などの不動産は特に評価が難しく、遺産分割協議で揉める原因にもなっています。

財産の評価額はどのように決定される?

財産の評価額は、相続人が財産を取得した際の時価によって決まります。ただし、財産の種類によって、評価方法が異なることがあるので注意が必要です。

財産の評価は時価で決まる

財産評価は、その財産を取得したときの時価によることが相続税法で定められています。時価とは取引が行われた際に取引成立となることが予想される価格で、遺産相続では相続人が被相続人から財産を相続した日、つまり被相続人が亡くなった日の価格が時価となります。

財産の種類で評価方法が変わる

財産には、預貯金をはじめとした金融資産のほか土地や建物等の不動産、株式、美術品、骨董品など評価が困難なものもあります。具体的な評価方法については、国税庁の「財産評価基本通達」でそれぞれの財産の特性に応じた基準が示されています。

不動産の評価方法とは

様々な財産の中でも、不動産の評価は複雑でわかりにくいことが多いです。同じ不動産でも土地と建物は分けて評価されるため、それぞれの評価方法について把握しておきましょう。

土地の評価方式は2通りある

土地の評価方法には「路線価方式」と「倍率方式」の2通りがあります。市街地は一般的に路線価方式で評価されますが、路線価が定められていない郊外や農村部では倍率方式を用いて評価します。

路線価方式と倍率方式の違いとは?

路線価方式は、土地の評価額を路線価によって算出する方法です。路線価とは所有する土地に面した道路に割り当てられた1㎡あたりの価格のことで、毎年7月頃に国税庁から発表されます。倍率方式では、その土地の固定資産税評価額に国税局長が定めた地域ごとの評価倍率を乗じて評価額を算出します。

建物の評価額は固定資産税評価額と同じ

建物の評価額は、固定資産税評価額と同じ額となります。固定資産税評価額は、住所地のある市区町村役場の固定資産税課で固定資産税台帳の閲覧を申請すると確認できます。固定資産税評価額は3年に1度改定されています。

土地や家を貸している場合の評価方法はどうなる?

他人に土地や家を貸している場合には、さらに評価方法と評価額が変わってきます。自用地の場合と評価方法や評価額がどのように異なるのかについてみていきましょう。

貸宅地や貸家建付地は評価額が下がる

土地や家を人に貸している場合には、借主に借地権があるため自用地よりも不動産の評価額が下がることが一般的です。

自用地と貸宅地の違いとは

自分のために使用する土地を自用地といいます。それに対し、他人に貸している土地は貸宅地といいます。貸宅地では貸主に所有権がありますが、借主にも借地権があるため、貸主だからといってその土地を自由に使用することはできなくなっています。

貸宅地は借地権の分だけ評価額が低い

借主は借りている土地や家を借地権で守られています。そのため、所有者である被相続人が亡くなったからといって、すぐにその土地を更地にして売却し借家人を追い出すことはできません。そのような理由から、貸宅地の評価額は自用地よりも低くなります。

貸家や賃貸アパートでも土地の評価が下がる

家やアパートを建てて人に貸している土地を貸家建付地といいますが、この場合も自分が住んでいる場合より評価額は下がります。これは、建物内に他人が住んでいることで所有者の利用が制限されるためです。

貸宅地や貸家建付地の評価方法

貸宅地や貸家建付地は、どのような計算で評価されるのでしょうか。これらを評価する上でキーポイントになるのが、借地(家)権割合です。この割合により、これらの評価額が変動することになります。

貸宅地の評価方法

借地権は自用地としての価格に借地権割合をかけて求められます。貸宅地の評価額は以下の計算式で算出されます。

貸宅地の評価額 = 自用地としての価格 × ( 1 − 借地権割合 )

貸家建付地の評価方法

貸家建付地は、自用地としての価格から借地権割合、借家権割合、賃貸割合をマイナスして評価されます。計算式は以下の通りです。

貸家建付地の評価額 = 自用地としての価格 ×(1- 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)

賃貸割合とは

賃貸割合とは、宅地の全床面積に対して賃貸している部分の床面積の割合です。部屋によって広さが異なる物件の場合は、各部屋の床面積の合計に対して入居者のいる部屋の床面積の割合を算出します。一戸建ての貸家の賃貸割合は0%か100%になります。

アパートやマンションを経営している場合

アパートやマンションを人に貸している場合、その不動産の評価額はどうなるのでしょうか?相続税対策のために評価額を下げるには、入居率の高さがポイントになります。

アパートやマンションの評価額

入居者がいるかいないかの二択しかない一戸建ての貸家とは異なり、アパートやマンションは時期によって入居率が異なります。入居率の高さによって不動産の評価額が変わるので注意が必要です。

入居率で評価額が変わることの具体例

たとえば、マンションAの入居率が80%、マンションBの入居率が40%、両マンションとも固定資産税評価額が2000万円で借家権割合が30%とすると、それぞれの評価額は以下のように計算されます。

マンションA:

2000万円−2000万円×30%×80%=1520万円

マンションB:

2000万円−2000万円×30%×40%=1760万円

入居率の低いマンションBのほうが、入居率の高いマンションAよりも240万円も評価額が高いことがわかります。

アパートに所有者が住んでいる場合

所有者がアパート内の部屋に住んでいる場合や自宅の一部を貸している場合にも、同じように賃貸割合を算出します。建物の床面積の半分を所有者が使用している場合には、賃貸割合は50%として計算されることになります。

賃貸割合は相続税対策のポイント

遺産として譲渡された不動産の評価額が高いことは、嬉しい反面その分相続税を多く納めなければならないことでもあります。アパートやマンションの場合、人に貸している床面積が大きいと評価額が下がるため相続税を減額することができます。

一時的な空室は賃貸として認められる

所有しているアパートやマンションの部屋を人に貸していると評価額が下がり、相続税も減額されます。空室がある場合は賃貸割合が減るため評価の減額率も下がりますが、一時的であれば賃貸されていたものとして認められます。

賃貸が認められる空室の条件

一時的な空室であると認められるには以下のような条件をクリアする必要があります。

  • 相続税の課税前に継続的に賃貸されてきたこと
  • 空室期間中に自己使用等の他の目的のために使用していないこと
  • 貸借人の退去後速やかに新しい入居者を募集し内装工事を行っていること
  • 空室期間が一ヶ月程度であること 等

まとめ

貸地、借家、貸マンション・アパートの相続税対策は弁護士に相談を

相続財産の中でも不動産の評価は複雑で難しいと言われています。路線価や固定資産税評価額等は年度によっても異なります。正しい評価額を算出するためにも、不動産の評価については弁護士や税理士などの専門家に依頼すると良いでしょう。

他人に貸している土地や家は一般の不動産に比べて評価額が下がりますが、相続税が減額されるメリットもあります。分からないことは弁護士などの専門家に相談しながら、賢く遺産相続手続を進めてくださいね。

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