非上場株式の評価方法は株主の経営的立場や会社規模により異なる

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非上場株式を相続する場合は、相続人の会社経営への影響力の有無により評価額や評価方法が異なります。主に原則的評価方式が採用されることが多いものの、会社の規模によりさらに細かく評価方式が分かれており仕組みは複雑です。非上場株式を実際に相続するときは、遺産相続に強い弁護士に相談するとよいでしょう。

非上場株式の評価方法とは

非上場株式とは、その名の通り金融商品取引所に上場されていない株式のことです。非上場株式を相続する場合は、会社の規模や業績、相続人自身の経営への影響力などを加味して評価額が決定されます。

非上場株式ってどんな株式?

それでは、非上場株式とは具体的にはどのような株式なのでしょうか。非上場株式ならではの特徴についてみていきましょう。

非上場株式とは

非上場株式は別名「取引相場のない株式」とも言い、上場株式、登録銘柄、店頭管理銘柄、公開途上にある株式以外の株式のことを指します。非上場株式を相続する場合の評価額については、相続人が株式発行会社への経営支配力がある株主かどうかで評価方法が異なります。

経営支配力がある株主とは

経営支配力がある株主とは、オーナー一族として相続人が経営に参画している場合や後継者として会社の経営に関わっている人のことをいいます。株主が議決権を持ちながら会社の経営に対して影響力を持っている場合は、こちらに該当します。

経営支配力がない株主とは

経営支配力がない株主とは、所有する株式が少ないため議決権割合が低く、経営に深く関与していない場合を指します。そのため、経営支配力のない株主の持つ株式はあまり価値がないと言われています。

非上場株式の評価はどうやってする?

非上場株式の評価方法は以下の2通りです。実際に評価額を決定する際にどちらの方式が採用されるかは、会社の規模や相続人の属性によっても異なります。

非上場株式の評価方法
原則的評価方式 「原則的評価方式」とは、株式を発行している会社の従業員数や総資産価額、売上高によって会社を大会社、中会社、小会社の3つに分類して評価額を計算する方法のことを指します。
配当還元方式 「配当還元方式」とは、配当金額から単純に株価を逆算する方法のことです。評価方法としては例外的な方法と言われています。

原則的評価方式で評価する場合

原則的評価方式は、会社の規模に応じてさらに細かく評価方法が分かれています。その細かい分類方法について見ていきましょう。

原則的評価方式の会社の規模により異なる3つのパターン

原則的評価方式は、会社の規模により以下の3つのパターンに分類されます。それぞれの方式にどのような違いがあるのでしょうか。

原則的評価方式
類似業種比準方式 「類似業種比準方式」とは、評価対象の会社と類似した上場企業の数値を基準に算定する方法で、配当・利益・純資産の3つの要素から成り、業績が高いほど評価額も高くなります。こちらは主に大会社で利用される評価方式です。
併用方式 「併用方式」とは、その名の通り、類似業種比準方式と純資産価額方式とを併用する方式で、主に中会社で利用される評価方法となっています。
純資産価額方式 「純資産価額方式」とは、相続税の課税時期に会社を清算すると仮定した場合に株主一人当たりに分配される額で評価する方法です。純資産が評価の基準となるため、純資産の時価が高いほど評価額も高くなります。主に小会社や特定の評価会社に利用される評価方法となります。

会社の規模の分類方法とは?

原則的評価方式では大会社・中会社・小会社で評価方法が分かれると説明しましたが、ここでは規模の分類の仕方についてみていきましょう。中会社は、評価額を算出する際に利用する斟酌率が異なるため、さらに<大><中><小>の3パターンに分けられます。

大会社

以下のいずれかの条件に当てはまる会社は「大会社」に分類されます。

  • 従業員数が100人以上
  • 総資産額が卸売業では20億円その他の業種では10億円以上で、従業員数が50人超
  • 取引金額が80億円その他の業種では20億円以上

中会社

以下のいずれかの条件に当てはまる会社は「中会社の<大>」に分類されます。

  • 総資産額が卸売業では14億円その他の業種では7億円以上、従業員数が50人超
  • 取引金額が卸売業では80億円その他の業種では20億円以上

以下のいずれかの条件に当てはまる会社は「中会社の<中>」に分類されます。

  • 総資産額が卸売業では7億円その他の業種では4億円以上、従業員数が30人超
  • 取引金額が卸売業では25億円、小売・サービス業では6億円、その他の業種では7億円以上

以下のいずれかの条件に当てはまる会社は「中会社の<小>」に分類されます。

  • 総資産額が卸売業では7000万円、小売・サービス業では4000万円、その他の業種では5000万円以上、従業員数が5人超
  • 取引金額が2億円、小売・サービス業では6000万円、その他の業種では8000万円以上

小会社

大会社・中会社のいずれの条件にもあてはまらない会社は「小会社」となります。

どの評価方法で評価するべき?

相続した株式をどの評価方法で評価するべきかは同族株主がいるかどうかでまず分かれ、次に株式の持株割合や中心となる同族株主の有無によっても異なります。場合分けが非常に複雑になっています。

同族株主がいる会社

「同族株主」とは、株主一人と同族関係者の保有する株式が30%以上である場合、そのグループに属する株主のことです。同族株主のいる会社では、相続人自身がその同族株主であるか否かによって評価方式が異なることがあります。

同族株主の場合

相続人が同族株主の場合、以下のいずれかにあてはまるときは原則的評価方式が採用されます。

  • 取得後の持株割合が5%以上
  • 取得後の持株割合が5%未満かつ中心的な同族株主のいる会社で、中心的な同族株主あるいは役員の立場
  • 取得後の持株割合が5%未満かつ中心的な同族株主がいない

また、以下の場合は配当還元方式が採用されます。

  • 取得後の持株割合が5%未満かつ中心的な同族株主がいる場合で、中心的な同族株主あるいは役員以外の立場

同族株主以外の株主の場合

同族株主以外の株主の場合は、配当還元方式で評価額を決定します。

同族株主のいない会社

同族株主のいない会社では、持株割合の合計が15%以上のグループの株主に相続人が属しているか否かによって評価方法が異なります。

持株割合の合計が15%未満のグループに属する株主の場合

持株割合の合計が15%未満のグループに属する株主の場合は、無条件に配当還元方式が採用されます。

持株割合の合計が15%以上のグループに属する株主の場合

持株割合の合計が15%以上のグループに属する株主の場合は、以下のいずれかに当てはまる場合は原則的評価方式が採用されます。

  • 取得後の持株割合が5%以上
  • 取得後の持株割合が5%未満で中心的な株主がいない場合もしくは中心的な株主がいる場合の役員

また、以下の場合は配当還元方式となります。

  • 取得後の持株割合が5%未満かつ中心的な株主がいる会社で、役員以外の役職についている

以上のように、非上場株式は評価方法が非常に難しく、素人にはわかりにくい仕組みになっています。そのため、非上場株式の存在があらかじめわかっている場合は、遺産相続に強い弁護士に早めに相談しておくとよいでしょう。

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