相続放棄のまとめ~相続しないための手続き方法と判断のポイント・注意点

相続放棄

遺産の中に借金などの負債が含まれている場合には、相続放棄をすることによって相続を避けることが効果的な対処方法です。相続放棄をすると、プラスの財産も受け取れなくなりますし、手続きには期限もあるので注意が必要です。そこで今回は、相続放棄のポイントや注意点などの基礎知識をまとめて解説します。

相続でお悩みなら弁護士に相談

相続放棄とは

相続放棄とは

相続放棄とは、一切の遺産相続をせずにすべてを放棄してしまうことです。

人が亡くなって相続が開始したら、法定相続人が法定相続分に従って遺産を相続することが基本です。遺産としては、現金や預貯金、不動産などのプラスの資産を思い浮かべるかもしれませんが、被相続人(亡くなった人)が借金を残して死亡するケースもあります。

遺産相続は借金も相続されてしまうので、注意が必要

相続財産の中から借金を支払えない場合には、相続人が自分の財産から被相続人の借金を支払わないといけません。

そこで、このように借金を支払いたくない場合において、相続放棄を利用します。相続放棄をすると、その人は初めから相続人ではなかったことになるので、借金も相続せず、その支払をしなくても良くなります。

借金があるのに相続放棄しないで放置しているとどうなるのか?

それでは、遺産の中に借金があるのに、相続放棄をせずに放置していたらどのような問題があるのでしょうか?

相続人自身の財産が差し押さえられてしまう!

この場合、まずは相続債権者から借金の支払督促が来ます。電話や郵便などで督促が来るので、まるで自分が借金苦であるかのような扱いを受けます。支払をせずに放っておくと、相続債権者から裁判を起こされてしまいます。そして、裁判所が判決を出したら、相続債権者は、相続人の遺産に対して強制執行(=差押)をしてきます。

このとき、差押えの対象になるのは、被相続人の遺産だけではなく、相続人自身の資産も含まれます。もし相続人に自分の家がある場合、相続債権者はその家を競売にかけて債権回収することもできるのです。借金を相続すると、その借金は「被相続人の借金」ではなく「相続人自身の借金」になってしまうからです。

このように、相続放棄をせずに相続することを単純承認と言いますが、遺産の中に借金が含まれているなら、単純承認せずに、早期に相続放棄すべきです。

相続放棄は撤回できないのか?

相続放棄をすると、撤回ができなくなるのかが問題です。

相続放棄の手続きをすると取消ができない

相続放棄には3ヶ月の期間がありますが、一回手続きをしたら、たとえその3ヶ月の期限内であっても取消ができません。たとえば、借金があるとわかって相続放棄したけれども、後で気が変わったから取り消すことはできないので、注意が必要です。

ただし、民法第919条2項では、相続放棄の取消ができる可能性があることを定めています。たとえば、詐欺や強迫行為によって無理に相続放棄させられた場合(民法96条)、未成年者が単独で(法定代理人の同意なしに)相続放棄した場合(民法5条)、成年被後見人が自分一人で相続放棄をした場合(民法9条)には、取消が認められます。これに対し、単に「後から財産があるとわかった」だけでは取消はできないので、覚えておきましょう。

相続でお悩みなら弁護士に相談

相続放棄のメリット

次に、相続放棄のメリットを見てみましょう。

負債を相続せずに済む

相続放棄の一番のメリットは、負債を相続せずに済むことです。たとえば、被相続人がサラ金やクレジットカードで借金をしていた場合、被相続人が事業者で銀行などから借入をしていた場合、被相続人が誰かの連帯保証人になっていた場合、そのまま相続をすると、相続人がその返済をしなければなりません。

未払家賃があったときや、被相続人が交通事故などを起こして被害者に損害賠償債務があった場合にもその債務は相続人に承継されます。交通事故で被害者が死亡していた場合などには、数千万円や1億円以上の損害賠償債務が発生していることも珍しくありません。

ここで相続放棄をすると、借金も相続しませんし、保証債務もなくなりますし、未払家賃や損害賠償債務も一切相続しないので、安心です。

遺産分割手続きにかかわらずに済む

相続放棄のメリットの2つ目は、遺産分割手続きにかかわらずに済むことです。

自分が法定相続人になっている場合、いろいろな遺産分割手続きを進めていく必要があります。まずは法定相続人が集まって遺産分割協議をしなければなりませんが、お互いに意見が合わずにトラブルになることも多いです。

トラブルが長引いたら家庭裁判所で調停や審判が必要になり、解決までに3年以上かかることも普通にあります。また、被相続人が事業をしていたら準確定申告が必要ですし、相続税が発生したら相続税の申告と納税も必要です。不動産を相続したら、不動産の相続登記もしないといけません。

こういったことは非常に面倒ですが、相続放棄をすると、これらの一切の遺産相続に関する手続きに関わらなくて良くなるので、メリットがあります。

特定の人に遺産を集中することができる

次に、相続放棄をすると、自分の相続分が他の相続人に配分されるので、他の相続人の遺産取得分が増えます。このことにより、特定の相続人に遺産を集中させることができます。

たとえば、兄弟3人が遺産相続をするときに、家を継ぐ長男に遺産を相続させたい場合などがありますが、その場合、相続を希望しない相続人が全員相続放棄をしたら、長男がその分の遺産を相続することができます。

相続放棄のデメリット

相続放棄には、デメリットもあるので、以下で確認しましょう。

プラスの遺産も相続できない

相続放棄をするときには、借金を相続しなくて良くなることに注目してしまいがちですが、実際には借金だけではなく、プラスの資産も相続できなくなることに注意が必要です。

たとえば、遺産の中に不動産がある場合や高額な預貯金がある場合、相続放棄をするとそういった資産も承継できなくなります。もし、負債を超える資産があるのにそれに気づかずに相続放棄をしてしまったら、全体として損をしてしまうことにもなります。

例をみてみましょう。父親が亡くなったときにサラ金で50万円借金があるとわかったので息子たちが急いで相続放棄をしたら、その後100万円のタンス預金があることがわかったとします。この場合、息子たちは預金をもらうことはできなくなり、損をします。はじめからきちんと財産調査をしていたら、100万円から50万円の支払をして、残りの50万円をもらうことができたはずだからです。

資産が失われてしまう

相続放棄のもう1つのデメリットは、資産が失われてしまうことです。遺産の中には、先祖代々伝わる不動産もありますし、父母が生前大切にしていた宝石類や骨董品、自分が育った思い出の生家などもあります。こうした思い入れのある資産であっても相続放棄をすると一切受け取れなくなります。他の相続人が相続してくれたら資産としては守ることができますが、自分しか相続人がいない場合や、相続人が全員相続放棄してしまったら、相続財産管理人が精算をして売り払い、最終的には国のものになってしまうのです。

相続でお悩みなら弁護士に相談

相続放棄の期限

相続放棄の期限は3ヶ月

以上のように、相続放棄にはメリットもデメリットもあるので、実際に相続放棄すべきかどうか、迷ってしまうことも多いです。しかし、相続放棄には期限があるので、いつまでも迷っていることはできません。

相続放棄の期限のことを「熟慮期間」と言い、民法によって定められています。民法第915条は、「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内」に相続放棄か限定承認か単純承認を選ばないといけないと規定しているのです。

熟慮期間の具体的な考え方

民法の定める「自己のために相続の開始があったことを知ったときから」というのは、具体的にどのようなことを意味するのかが問題です。被相続人が死亡したときから3ヶ月が経過すると、どのような理由があっても相続放棄をできなくなってしまうのでしょうか?たとえば、相続人と生前ほとんど交渉がなく、死亡したことすら知らないこともありますし、死亡したことを知っていても、被相続人に遺産があると気づかないため、相続放棄をしようと思わなかったこともあります。

死亡を知らないなら、熟慮期間は経過しない

まず「相続の開始があったことを知ってから」3ヶ月ですから、この期間のカウントは、被相続人の死亡を知らない限り開始しません。死亡してから1年後にようやく死亡を知ったなら、その後3ヶ月間は相続放棄することができます。

相続財産がないと信じたことに正当な理由があれば熟慮期間が開始しない

それでは、被相続人に借金その他の遺産があることを知らなかった場合にはどのような取扱になるのでしょうか?この場合、相続人が、被相続人に相続財産が全くないと信じたことにやむを得ない事由が認められる場合であれば、相続放棄をしないことについて、正当な理由があると認められます。そこで、相続人が被相続人の借金を知らなかったのであれば、死亡の事実を知っていても、熟慮期間のカウントが開始しません。

ただし、過失によって借金に気づかなかった場合には、相続放棄しなかったことについて正当事由があると認められないおそれがあります。たとえば、被相続人宅に債権者から督促の郵便が届いているにもかかわらず、相続人が郵便物をチェックしなかったので気づかずに3ヶ月が経過した、というようなケースでは、やはり相続放棄が認められなくなってしまいます。

よって、自分が相続人になったなら、被相続人の負債の状況を必ず調べて、もし借金があったら具体的にどのくらいの金額になっているのか、債権者に問い合わせてしっかりと調べましょう。

熟慮期間を延長してもらう方法がある

相続放棄は、3ヶ月の熟慮期間内に行う必要がありますが、その間に対応を決めかねることがあります。その場合、熟慮期間を延ばしてもらうことができる可能性があり、具体的には、家庭裁判所に対し、「熟慮期間延長の申立」と行います。

熟慮期間の延長が認められるためには、期間内に相続人が態度を決めかねる事情があることが必要です。たとえば相続人が海外に居住していたり、相続財産が複雑であったりするケースです。どのような場合でも必ず延長が認められるわけではないので、注意が必要です。

熟慮期間延長をしたいときには、被相続人の最終の住所地を管轄する家庭裁判所において申立をします。費用として、800円分の収入印紙と連絡用の郵便切手が必要です。申立書を作成して、被相続人の住民票除票か戸籍の附票、相続人の戸籍謄本をつけて提出したら、家庭裁判所において審査があり、延長するかどうかや、延長する期間が決定されます。

熟慮期間を延長してもらいたい場合には、熟慮期間内に手続きをする必要があります。熟慮期間を過ぎてしまったら、延長の申立をしても認められないので注意が必要です。また、熟慮期間の延長期間中に再度延長の申立をすることも可能です。

相続放棄するか迷ったら弁護士に相談しよう!

以上のように、相続放棄をすると借金を相続しなくても良くなりますが、プラスの資産も相続できなくなる点はデメリットです。また、相続放棄は期限があることにも注意が必要です。熟慮期間を過ぎてしまったら、多額の借金があっても相続せざるを得なくなり、自分の財産から支払をしなければなりません。

このように、期間内に適切に相続放棄すべきかどうかの判断をするのは、難しいことが多いので、相続放棄するかどうか迷ってしまったら、早めに弁護士に相談しましょう。弁護士なら、ケースに応じて適切な対処方法をアドバイスしてくれますし、必要なら熟慮期間内に確実に相続放棄してくれるので、安心です。

相続放棄すべきか迷ったら弁護士に無料相談
北海道・東北地方 北海道青森岩手秋田宮城山形福島
関東 東京埼玉神奈川千葉茨城栃木群馬
北陸・甲信越 新潟山梨長野石川富山福井
東海 愛知静岡岐阜三重
関西 大阪京都奈良兵庫滋賀和歌山
中国・四国 広島岡山山口鳥取島根香川徳島愛媛高知
九州 福岡熊本大分宮崎佐賀長崎鹿児島沖縄

相続放棄すべき場合とは?

相続放棄にはメリットもデメリットもありますが、相続放棄する場合とはどのような場合なのでしょうか?典型的なケースを順番にご紹介します。

明らかに債務超過の場合

まず、明らかに債務超過のケースです。この場合、相続放棄をしても損になることはありませんし、放っておくと相続人が自分の資産から借金を支払わないといけなくなるので、相続放棄をすべきです。

債務超過かどうかがわからない場合は?

これに対し、借金がどれくらいあるかどうかが不明で、債務超過かどうかの判断ができないケースがあります。被相続人がサラ金から借入をしている場合でも、何社からどれだけの借入があるのかがわからないことがあります。被相続人が交通事故を起こして死亡した場合には損害賠償債務を相続しますが、交通事故の損害賠償債務の金額は、交通事故後相当な期間が経過してからで無いと明らかにならないので、相続放棄の期間内には明らかにならないことが多いです。

また、被相続人の借金の額はわかるけれども、プラスの資産額がわからないこともあります。たとえば、被相続人が長らく1人暮らしをしていた場合などには、どこの銀行を利用していたかがわからないことも多いですし、ネット銀行やネット証券を利用していた場合などには、さらに財産内容の調査が困難になります。

借金があるのは確実だけれども、それを上回る資産があるなら、相続放棄をすると損になってしまいます

この場合には、限定承認という手続きを利用することが考えられます。限定承認とは、相続財産から必要な支払をして、あまりがあったら相続人が相続できる手続きです。調査の結果、債務超過になっていたら借金を相続する必要はありません。相続後に遺産の内容の調査がすぐにはできず、プラスになるのかマイナスになるのかがわからない場合に検討しましょう。

限定承認ができない場合

ただ、限定承認はいつでもできるわけではないので、注意が必要です。限定承認をするためには、共同相続人が全員協力して家庭裁判所に申述をしなければならないからです。相続人のうち、1人でも単純承認をしてしまったら、もはや限定承認はできません。また、他の相続人がいつまでも対応に迷っていて態度を決定しない場合、限定承認を待っていたら、相続放棄や限定承認できる期間である熟慮期間を過ぎてしまうおそれもあります。

そこで、債務超過かどうかが明らかでない場合でも、他の相続人が協力してくれないなら、安心のために自分だけ先に相続放棄するのも1つの方法です。こういった場合に実際に相続放棄すべきかどうかについては、借金と資産の見込みがどのくらいになるかによって個別に判断が必要です。自分では適切に判断できる自信がないなら、弁護士に相談することをお勧めします。

特定の相続人に遺産を承継させたい場合

相続放棄すると、他の相続人の相続分が増える

次に、特定の相続人に遺産を承継させたい場合にも、相続放棄が役立ちます。ただ、相続放棄をしても、他の相続人に自分の相続分が法定相続分に従って按分されるので、必ずしも特定の相続人にすべての遺産を集中させられるとは限りません。相続放棄で1人の相続人に遺産を相続させるためには、他の相続人が全員相続放棄する必要があります。

相続人が兄弟2人の場合などでは、自分1人が相続放棄したら兄にすべての遺産を相続させることができます。

相続分の譲渡と相続放棄の違い

また、特定の相続人に相続分を集中させたい場合には、相続放棄よりも相続分の譲渡が役に立つことも多いです。相続分の譲渡とは、自分の法定相続分を、自分以外の人に譲渡することです。共同相続人に譲渡することもできますし、相続人以外の第三者に譲渡することもできます。

たとえば、長男に相続分を集中させたいなら、自分の相続分を長男に全部譲渡したら良いのです。相続放棄の場合、自分の相続分が他の相続人全員に按分されてしまいますが、相続分の譲渡なら、特定の譲受人にすべての相続分を譲ることができるので、より直接的に目的を達成しやすいです。

相続放棄と相続分の譲渡の例

わかりにくいので、例を出して説明します。兄弟3人が相続人になっていて、遺産が6000万円あるとします。このとき、3人の相続分はそれぞれ2000万円ずつです。ここで、自分(妹)としては兄に相続分を集中させたいとします。ここで、自分が相続放棄をすると、兄と次男に遺産相続分が移るので、兄と次男がそれぞれ3000万円ずつの遺産相続分を取得します。次男が相続放棄をしない限り、兄の相続分は3000万円です。

これに対し、自分の相続分を兄に譲渡した場合、兄の相続分が4000万円に増加し、次男野相続分は2000万円のままです。このように、相続放棄によっても長男の取得分は増えますが、相続分の譲渡をした方がより多くなります。

相続分の譲渡の注意点

ただ、相続分の譲渡をしても、債権者に対してはそのことを対抗することはできないと考えられています。そこで、たとえば先の例でも長男に相続分の譲渡をすると、妹はプラスの資産は受けとることはできなくなるけれども、借金だけは支払わないといけなくなります。もし、遺産の中に少しでも負債があるなら、相続分の譲渡ではなく相続放棄をすべきです。

遺産トラブルに関わりたくない

相続放棄すべき事案としては、遺産トラブルにかかわりたくないケースもあります。

複数の相続人がいて遺産分割協議をしないといけない場合、トラブルになる例が非常に多いです。もともと仲の良い兄弟などの親族であっても、「骨肉の争い」と言うような激しい争いを繰り広げて、心から憎しみ合うことも珍しくありません。自分の相続分が少ない場合などには、このような遺産トラブルに関わりたくないことが多いでしょう。

また、相続手続きは非常に面倒なことが多いです。遺産分割協議ができたとしても、銀行で預貯金の払い戻し手続きをしたり、不動産の名義書換をしたりしないといけませんし、そのためには膨大な量の戸籍謄本類の取り寄せなども必要になります。自分が外国に居住しているので、日本の資産のことなどどうでもよい、というケースもあります。

ここで、相続放棄をすると、自分ははじめから相続人ではなかったことになるので、遺産分割手続きに参加する必要がなくなりますし、遺産相続に関連する手続きをしなくてよくなるので、手間が省けます。

相続放棄と生命保険

相続放棄をすると、生命保険を受けとることができなくなるのか?と思われることがあるので、以下で見てみましょう。

相続放棄をしても保険金を受けとることができる

被相続人が生命保険に加入していた場合、被保険者である被相続人が死亡することによって、死亡保険金が支払われることがありますが、多くの場合、相続人は相続放棄をしても、この死亡保険金を受けとることができます。

死亡保険金は、被相続人の死亡という事実によって相続人が当然に受けとることができる相続人の固有の権利であると考えられているからです。生命保険金を受けとることによって、相続放棄ができなくなることもないので、安心しましょう。

受取人が「被相続人」の場合には受けとることができない

ただし、これは、死亡保険金の受取人が「相続人」やその他の第三者だったケースです。
受取人が「被相続人」本人であった場合、死亡保険金は遺産の内容になってしまうため、相続放棄した相続人がこれを受けとることができません。もし受けとったら相続放棄ができなくなってしまうおそれもあるので、注意が必要です。

医療保険の場合に注意

保険には、医療保険もあります。これは、入院給付金や傷害医療保険などの保険です。こういった医療保険の受取人は、通常被相続人となっています。そこで、相続放棄をしたときやこれからしたいときには、医療保険の給付金を受けとってはいけません。もし受けとったら相続放棄ができなくなったり取り消されたりするおそれがあるので、注意しましょう。

相続放棄と代襲相続

相続放棄については、代襲相続との関係でも注意が必要です。

代襲相続とは

代襲相続とは、相続人が被相続人よりも先に死亡していた場合、相続人の子どもが相続人に代わって相続をすることです。わかりにくいので、例を挙げて説明します。

父親が亡くなり、子どもが相続するケースを考えてみましょう。このとき、子どもが父親より先に亡くなっている場合があります。子どもがいなければ、第2順位の親に相続権が移るはずですが、既に亡くなっている子どもに子どもがいたら、異なる結果となります。

この場合、子どもの子ども(父親から見たら孫になる)が子どもに代わって相続人となります。このことを、代襲相続と言います。子どものことを被代襲相続人、孫のことを代襲相続人と言います。孫が代襲相続する場合、第2順位の親は相続をしません。

相続放棄によって代襲相続は発生しない

それでは、この事案において、子どもが相続放棄をしてしまったら、孫は代襲相続してしまうのかが問題です。

この場合、代襲相続は起こりません。相続放棄をすると、その人ははじめから相続人ではなかったことになるので、代襲相続の基礎もなくなるためです。そこで、父親が借金を残して死亡した場合、子どもだけが相続放棄をしたら、孫までは相続放棄をしなくても良いのです。このように、「相続放棄を原因として」代襲相続が起こることはないので、まずは押さえておきましょう。

代襲相続をしても、相続放棄が必要なケースがある

次に知っておいていただきたいのは、「代襲相続する場合でも相続放棄が必要なケースがある」ことです。すでに自分が代襲相続することが確定している場合、遺産の中に借金があるなら相続放棄をしなければなりません。

たとえば、叔父が亡くなったケースにおいて叔父の兄弟姉妹しか相続人がおらず、叔父の妹である母親が叔父より先に亡くなっていたとします。この場合、本来の相続人である母親が既に亡くなっているので、代襲相続によって甥や姪が相続人になります。このとき、叔父が借金を残していたら、甥や姪が代襲相続によって借金を相続してしまうので、相続したくなければ相続放棄をしなければなりません。

このように、「相続放棄しても代襲相続が発生しない」ということは事実ですが、「代襲相続をしても相続放棄が必要なことがある」ことも事実です。この2つの問題を混同すると、知らない間に借金を相続してしまって不利益を被るおそれがあるので、正しく理解しておきましょう。

相続放棄でわからないことがあったら弁護士に相談しよう

以上のように、相続放棄では、知っているようで知らないことが非常にたくさんあります。相続放棄すべきかどうか迷ってしまうこともありますし、相続放棄よりも相続分の譲渡や限定承認の方が適切であるケースもあります。また、生命保険の受取ができるケースとできないケースがありますし、代襲相続との関係でも複雑な問題があります。

こうした問題について疑問があるとき、自己判断で対処すると、思わぬ不利益を被るおそれが高いので、相続放棄について何かわからないことがあるなら、相続問題に強い弁護士に相談しましょう。

相続放棄の手続き・方法

次に、相続放棄をしたいときに具体的にどのような手続きが必要になるのか、その方法をご説明します。

相続財産の調査が重要

相続放棄をするときには、まずは相続財産の調査が重要です。そもそも資産が債務より大きいことが明らかであれば、相続放棄をする必要がないためです。

プラスの資産の調査

相続財産を調べるときには、被相続人の家の中をよく探します。預貯金通帳や金融機関などからの通知書が届いていたら、銀行に行って「残高証明書」を出してもらいましょう。どこの銀行と取引をしているかわからない場合には、近隣の金融機関や心当たりのある金融機関に照会をすることもできます。不動産については、市町村役場に行って名寄せ帳(固定資産課税台帳)を見せてもらったら、その市区町村内で被相続人が所有している土地建物の内容を調べることができます。また、証券会社などからの通知が来ていたら、その会社に連絡を入れて取引内容を確認しましょう。

マイナスの負債の調査

次に、負債の調査も非常に重要です。郵便物を確認して、サラ金やカード会社、銀行やその他の金融機関から支払に関する書類が来ていないか、チェックしましょう。債権者から電話がかかってくることもありますし、自宅内に借用証や金銭消費貸借契約書などの書類がある場合もあります。

相続放棄は1人でもできる

相続放棄をするときには、自分一人でもできます。これは、他の相続人と共同でしなくても良い、という意味です。そこで、遺産の中に借金があるとわかったら、他の相続人と相談をする必要はありません。また、他の相続人が反対する場合や態度をはっきりさせない場合でも、自分一人で先に相続放棄をすることができます。他の相続人と歩調を合わせようとして熟慮期間を過ぎてしまうと不利益が及ぶので、自分の判断ですすめましょう。

なお、このように自分一人で決定をして手続きができるのは、限定承認にはない相続放棄のメリットです。

相続放棄申述書の作成と提出

相続財産の調査をして相続放棄をすることを決めたら、いよいよ家庭裁判所に対し、相続放棄の申述をします。そのためには、相続放棄の申述書という書類を作成して、必要書類を費用を沿えて家庭裁判所に提出する必要があります。相続放棄の申述書は、家庭裁判所に書式があるので、順番に書き込んでいくと良いです。

このとき、相続が開始したことを知ったときや、相続放棄の理由を書き込む欄があります。相続開始時から3ヶ月以上が経過していると、熟慮期間の経過が問題になる可能性があります。相続財産の概略については、わかる範囲で書き込みましょう。

相続放棄の申述先の家庭裁判所は、被相続人の最終の住所地を管轄する家庭裁判所です。

相続放棄の必要書類

相続放棄の必要書類は、以下の通りです。

  • 相続放棄の申述書
  • 被相続人の戸籍の附票または住民票の除票
  • 申述人の戸籍謄本
  • 被相続人の死亡がわかる戸籍謄本

このほか、申述人が代襲相続人である場合には、被代襲者の死亡がわかる戸籍謄本や被相続人が生まれてから死亡するまでのすべての戸籍謄本類が必要です。

また、ケースによって、被相続人の子どもや親などの死亡の記載がある戸籍謄本、被相続人の子どもや孫が生まれてから死亡するまでのすべての戸籍謄本類などが必要になります。

相続放棄にかかる費用

相続放棄にかかる費用は高額ではありません。申述の際に収入印紙800円分を購入して申述書に貼付して提出すれば足ります。連絡用の郵便切手が1000円くらい必要です。

事前に戸籍謄本類を集めるのに費用がかかる

1通450円(戸籍謄本)や750円(除籍謄本)必要なので、被相続人などの生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本類を郵送で取り寄せたら、全部で5000円以上になってしまうことも普通にあります。また、たくさんの戸籍謄本類を集めるのは、非常に手間ですし、抜け漏れのないように正確に集めるのはかなり困難です。自分で集めるのが難しければ、専門家に依頼すべきです。

相続放棄照会書と回答書とは?

相続放棄の申述をしたら、しばらくして家庭裁判所から「相続放棄照会書」と「回答書」が送られてきます。照会書と回答書は別になっていることもあれば、一体となっていることもあります。

相続放棄照会書とは、相続放棄の申述をした事情について確認するための照会書

申述人は、必要事項を回答書に記載して、家庭裁判所に返送しなければなりません。回答書には、「被相続人と、生前に交流があったか」「被相続人の生前の経済状況や生活状況について知っていることがあるか」「いつ相続が開始したことを知ったのか」「申述前に相続財産の調査をしたのか」「相続開始後3ヶ月以上が経過しているが、それまでに相続放棄しなかったのはなぜか」など、裁判所が相続放棄の申述を認めるかどうかの判断に必要な質問が書かれています。

相続開始後3ヶ月を経過していて、その理由について適切な事情を説明出来ないと、相続放棄が認められなくなるおそれがあります。熟慮期間を過ぎているなら、相続財産があると知らなかったことなど、相続放棄ができなかったことを説明する事情を説得的に記載する必要があります。自分では適切な書き方がわからない場合には、弁護士に相談してから書きましょう。

相続放棄の受理通知書が送られてくる

家庭裁判所に対して相続放棄の照会に対する回答書を提出して、特に問題がない場合には、家庭裁判所において相続放棄が受理されて、受理通知書が送付されてきます。

かなりあっさりとした1枚だけの書類ですが、これによって有効に相続放棄ができたことになります。

相続放棄したことの証明方法

それでは、有効に相続放棄ができていることを証明するためには、どのような方法があるのでしょうか?債権者から「本当に相続放棄出来ているのか?」などと聞かれたときにどう対処したら良いのかが問題になります。

この場合、基本的には家庭裁判所から送られてきた受理通知書で足ります。債権者に対し、受理通知書をFAXするかPDFで送信するかコピーを郵送したら、債権者は納得します。

ただ、他の相続人が不動産の相続登記をするときに、「受理証明書」が必要になることがあります。受理証明書とは、相続放棄が受理されていることを家庭裁判所が証明してくれる書類です。受理証明書を取得するためには、家庭裁判所に対し、相続放棄申述受理証明書の申請書を提出します。1枚150円の収入印紙が必要になります。

相続放棄をしたら、念のために受理証明書を1通取り寄せて、手元に置いておくと安心です。受理通知書では意味が通じにくい債権者でも、受理証明書を見ると相続放棄出来ていることがわかりやすいので、受理証明書の提示によって納得してもらうことができます。

相続放棄と相続分の放棄は違う!

相続放棄とよく混同される手続きとして、相続分の放棄があります。相続分の放棄とは、自分の遺産に対する共有持分を放棄することです。相続分の放棄をするときには、遺産分割協議の場で自分は遺産相続をしないことを他の相続人に意思表明して、遺産分割協議書にその旨書き込んでもらうことが多いです。相続分の放棄をすると、自分は遺産を相続することがなくなるので、相続放棄と似た効果が発生します。

相続分の放棄をしても借金支払い義務が残る

しかし、相続放棄と相続分の放棄は全く違います。まず、相続放棄をすると、プラスの資産だけではなく借金も相続しなくなりますが、相続分の放棄をしても、借金は相続してしまいます。これは、相続放棄をしたらその人ははじめから相続人ではなくなるのに対し、相続分の放棄をしても、その人は、もともとの相続人としての地位を失うわけではないからです。

相続放棄は家庭裁判所への申述が必要

また、相続放棄は家庭裁判所に申述をしなければなりませんが、相続分の放棄は他の相続人に対して意思表明をすれば足ります。相続放棄は3ヶ月の熟慮期間内に行わないといけない期間制限がありますが、相続分の放棄にはそういった期限はありません。

重要なポイントは、借金を相続したくない場合には、相続分の放棄だけではなく必ず相続放棄が必要だということです。相続分を放棄したので借金を相続しなくなったと思い込み、熟慮期間を経過してしまう人がいるので、注意しましょう。

相続放棄と遺贈の放棄の違い

次に、相続放棄と遺贈の放棄の違いを見てみましょう。

遺贈とは、遺言によって遺産の分与を受けることですが、遺贈には特定遺贈と包括遺贈があります。特定遺贈とは、預貯金や不動産などの特定の遺産を分与する場合、包括遺贈とは遺産のうちの〇分の〇など、包括的に分与する場合です。

どちらの場合でも、遺贈の放棄は可能です。ただ、包括遺贈の場合、借金も相続するため、放棄するためには相続放棄と同様の家庭裁判所への申述の手続きが必要になります。

遺贈を放棄しても相続放棄が必要

問題になるのは、相続人が遺贈を受けているケースです。遺産の中に借金が含まれているので相続をしたくない場合、遺贈を受けた相続人は、どのような手続きをとれば良いのでしょうか?

まず、特定遺贈の場合には、借金を相続しないので、相続放棄だけをしたら足ります。

包括遺贈の場合には、遺贈の放棄と相続放棄の両方が必要になります。包括遺贈の放棄をしても相続人である地位はなくならないので、相続人としての借金の相続が起こってしまうからです。どちらも同じ家庭裁判所への申述手続きであり、どちらの期間も同じ熟慮期間の3ヶ月です。どちらかの手続きしか行わないと、借金の支払をしなければならないおそれがあるので注意しましょう。

相続放棄と自己破産の違い

相続放棄は、自己破産とも混同されることがありますが、これらは全く異なる制度です。

まず、相続放棄とは、遺産を相続しなくなる手続きです。そこで、被相続人の借金は相続しなくなりますし、遺産の内容になっている不動産などをもらうことはできませんが、もともと自分が借金していた場合には、その借金は残りますし、もともとの自分の財産が無くなることはありません。

これに対し、自己破産をすると、自分の財産や負債も含めて、一切がなくなります。相続した借金だけではなく、自分自身の負債も帳消しになりますし、遺産の内容になっている不動産がもらえなくなるだけではなく、自分のもっている不動産も失うことになります。

また、相続放棄には熟慮期間の3ヶ月以内に行わなければなりませんが、自己破産にはそのような期限はありません。

こうしたことから、大きな借金を相続してしまった場合に相続放棄の熟慮期間を過ぎてしまったら、最終的に自己破産しなければならないケースがあります。

相続開始前に相続放棄できる?

次に、相続開始前に相続放棄ができるのかどうかも確認しましょう。

相続開始前の相続放棄は認められていません。相続放棄は、法律によって「相続が開始したことを知ってから3ヶ月」の熟慮期間にするものと明示されているためです。そこで、生前に「相続放棄します」などと念書や誓約書を書いても無効ですし、生前に家庭裁判所に相続放棄の申述をしても、受理してもらうことはできません。

生前に相続放棄と似た効果を狙いたいのであれば、被相続人がその相続人に遺産を残さない内容の遺言を残し、その相続人に「遺留分の放棄」をしてもらうべきです。相続人が兄弟姉妹の場合には、遺留分がないので、遺留分の放棄は不要です。

法定単純承認に注意!

相続放棄をしたいのであれば、法定単純承認に注意しなければなりません。法定単純承認が成立すると、相続放棄ができなくなったり取り消されたりするためです。以下で、どのようなものなのか、説明します。

相続放棄ができなくなる法定単純承認とは?

単純承認とは、遺産相続に条件をつけずに一切を相続することです。この場合、プラスの資産もマイナスの負債も、すべてを相続してしまいます。

そして、法定単純承認とは、一定の事由によって当然に単純承認が成立してしまうことです。そこで、法定単純承認が成立すると、それに反する効果を持った相続放棄ができなくなってしまいます。では、どういったケースにおいて、法定単純承認が成立するのでしょうか?

相続財産を処分したとき

1つ目は、「相続財産を処分したとき」です。たとえば、不動産を売却したとき、預貯金を払い戻して自分のものとして使ったときなどがわかりやすいですが、物理的に壊した場合や捨てた場合にも法定単純承認が成立します。

ただし、相続財産の保存行為であれば、行っても法定単純承認になりません。たとえば、相続不動産の補修をしたり、相続債権の支払をしたりしても、単純承認したことにはならないので、相続放棄をすることができます。

相続財産を隠匿・背信的な行為をしたとき

2つ目は、相続財産を隠匿したときや、故意に遺産目録に虚偽の記載をした場合です。相続財産の一部を隠して相続放棄をして、借金だけを免れようとした場合などには相続放棄ができません。このような背信的な行為をする相続人を保護する必要がないからです。

また、遺産目録というのは、限定承認の申述をするときに必要になる相続財産のリストのことです。限定承認をするときには、判明している相続財産をすべて遺産目録に記載して提出しないといけませんが、このとき、財産を隠すために虚偽の記載をする人がいます。このような行為をしたときにも、やはり限定承認や相続放棄を認めるべきではないので、法定単純承認が成立します。

いったん法定単純承認が成立してしまったら、たとえ熟慮期間内であっても相続放棄は認められません。相続放棄や限定承認によって借金返済を免れたいなら、一部の遺産を隠して自分のものにしようと考えてはいけませんし、不注意であっても財産を処分・費消してはいけません。

相続放棄を取り消されることがある?

いったん有効に相続放棄をしても、その後取り消されてしまうこともあります。それは、やはり法定単純承認に該当する行為をしたケースです。そこで、いったん相続放棄をしたならば、勝手に遺産を使ったり処分したりしてはいけません。

法定単純承認にならないケース

相続財産を使ったり処分したりすると法定単純承認が成立してしまいますが、財産をもらったとしても法定単純承認にならないケースがあります。

それは、被相続人の衣類などのほとんど価値のないものをもらったケースです。いわゆる形見分けです。たとえば、思い出の品として、故人がよく来ていた上着やズボン、身の回り品などをもらっても、相続放棄することはできますし、相続放棄が取り消されることはありません。

また、墓石などの祭祀財産は、相続放棄をしても承継できます。祭祀財産は、そもそも相続財産には入っていないので、祭祀承継者を決定するとき、その人が相続放棄したかどうかは無関係です。そこで、被相続人の遺言や慣習などによって祭祀承継者になるべきケースであれば、相続放棄しても祭祀承継者になれますし、墓石などを引き継いだことによって法定単純承認は成立せず、相続放棄が取り消されることもありません。

相続放棄しても財産管理義務がある

相続放棄した場合の財産管理義務とは

相続放棄をした場合の効果についても確認しておきましょう。相続放棄をしたら、自分は相続人ではなくなるのですから、相続財産について何らの責任も負わなくなると考えられることが多いです。しかし、実はそういうわけにはいきません。

相続放棄をしたとしても、もとの相続人は、その財産を然るべき人に手渡すまでの間は、その財産を適切に管理すべき義務を負います。この場合の管理義務の程度は、自分の財産と同等のレベルのものなので、さほど高いものではありません(民法940条)。ただ、不注意によって相続財産を棄損してしまったり他人に損害を与えてしまったりしたら、相続放棄をした人であっても損害賠償責任を負うことになります。

そこで、相続放棄をした場合、他の相続人にその財産を引き渡すまでの間、適切に管理しなければなりません。

誰も相続人がいない場合、どうすべきか?

それでは、すべての相続人が相続放棄をして、誰も相続する人がいなくなってしまったら、いつまで財産を管理しなければならないのでしょうか?

この場合、「相続財産管理人」を選任しなければなりません。相続財産管理人とは、相続財産を管理して生産する業務を行う人のことです。家庭裁判所に申立をして、選任してもらう必要があります。相続財産管理人を選任したら、その人が相続財産を管理し始めるので、相続人は相続財産を管理する必要がなくなります。

相続財産管理人を選任するためには、被相続人の最終の住所地を管轄する家庭裁判所において、相続財産管理人の選任申立をします。この時、収入印紙800円と官報公告費用3775円が必要です。これ以外に、裁判所が定める予納金の支払いが必要になることもありますが、相続財産管理人選任の予納金は数十万円以上になることもあるので、負担は大きいです。

相続放棄の方法に迷ったら弁護士に相談しよう!

相続放棄をするためには、まずは相続財産を調査して家庭裁判所への申述をする必要があります。その際、家庭裁判所からの照会に対し、適切に回答しなければなりません。また、法定単純承認が成立すると、たとえ熟慮期間内であっても相続放棄ができなくなってしまいます。しかも、相続放棄をしても、適切な人に遺産を引き継ぐまでは管理責任を負いますが、このようなことは、一般にはあまり知られていないので、注意が必要です。

相続放棄には、注意しなければならないポイントが非常にたくさんあります。自分で間違った判断や対処をすると、相続放棄ができなくなって借金を相続しなければならなくなるおそれもあるので、相続放棄の方法で迷った場合には、相続問題に強い弁護士に相談しましょう。

相続放棄すべきか迷ったら弁護士に無料相談
北海道・東北地方 北海道青森岩手秋田宮城山形福島
関東 東京埼玉神奈川千葉茨城栃木群馬
北陸・甲信越 新潟山梨長野石川富山福井
東海 愛知静岡岐阜三重
関西 大阪京都奈良兵庫滋賀和歌山
中国・四国 広島岡山山口鳥取島根香川徳島愛媛高知
九州 福岡熊本大分宮崎佐賀長崎鹿児島沖縄

相続放棄と限定承認の違い

今まで何度か限定承認についての説明をしましたが、相続放棄は、限定承認とよく似ています。どちらを利用しても、相続財産の中の借金を相続しなくて良くなるからです。それでは、この2つにはどのような違いがあるのでしょうか?以下で確認しましょう。

プラスの資産を承継できる可能性の有無

まず、相続放棄をすると、マイナスの負債だけではなくプラスの資産も相続できなくなります。これに対し、限定承認の場合には、遺産の内容を精査して、債権者などへの支払をしてもあまりがあれば、相続人はそのあまりの部分を相続することができます。このように、プラスの財産を相続できる可能性がある点は、相続放棄にはない限定承認の特徴でありメリットです。

1人でできるかどうか

次に、相続人が1人でできるのかどうかも異なります。相続放棄の場合には、相続人が1人で申述することも認められます。そこで、他の相続人と意見が合わなくても、さっさと自分一人で相続放棄の申述をしてしまったら、自分は借金を支払わなくて良くなります。これに対し、限定承認は、相続人が全員共同して行わなければなりません。そこで、誰か1人でも単純承認したら、もはや限定承認はできません。また、足並みを揃えないといけないので、準備に時間がかかるため、熟慮期間が経過してしまわないように注意が必要です。このように、全員が共同でしないといけないことは、相続放棄にはない限定承認のデメリットです。

相続放棄・限定承認の申述照会とは?

自分が相続放棄をしなくても、他の相続人が相続放棄をしているかどうかが問題になることがあります。たとえば、遺産分割協議をするときには、すべての相続人が参加しなければなりませんが、相続放棄をした人は協議に参加しません。ただ、他の相続人との関係性によっては正面切って聞きにくいこともありますし、他の相続人と連絡がとれない場合があるので、相続放棄したかどうかを知る必要があります。

また、債権者の立場になると、相続人らが限定承認しているのかどうかが問題になります。

このように、自分以外の他の人が相続放棄や限定承認しているかを知りたいときには、家庭裁判所に対し、相続放棄・限定承認の照会をすることができます。

照会をすることができる人は、相続人と、相続債権者などの利害関係人です。利害関係人というのは、相続債権者などです。

照会の際には、被相続人の最終の住所地を管轄する家庭裁判所に対し、照会申立書を提出します。このとき、以下の書類を添付する必要があります。

相続人が照会をする場合

  • 被相続人の住民票除票
  • 照会者(相続人)と被相続人の戸籍謄本
  • 照会者(相続人)の住民票
  • 相続関係図

相続関係図は、手書きなどで作成した家系図のような図面です。

債権者などの利害関係人が照会をする場合

  • 被相続人の住民票除票
  • 債権者の資格証明書(商業登記簿謄本や代表者事項証明書。個人の場合には住民票)
  • 利害関係についての資料(金銭消費貸借契約書、訴状、競売開始決定書、債務名義等など)
  • 相続関係図

相続放棄や限定承認の照会には、手数料はかかりませんが、返信用の封筒と切手を提出する必要があります。

照会をすると、家庭裁判所から照会に対する回答書が送られてくるので、それを見たら、当該被相続人について、相続放棄や限定承認が行われているのかどうかを知ることができます。

相続放棄しても遺贈を受けることができるのか?

相続放棄しながら遺贈を受けることができる?

最後に、相続放棄と遺贈や死因贈与の関係について、説明しておきます。相続放棄をすると、プラスの資産を受けとることができなくなりますが、遺贈や死因贈与であれば、相続財産を受けとることができるのかという問題です。それが可能なら、相続放棄によって借金を免れながら、特定遺贈や死因贈与により、遺産の一部をもらうことができることになります。

相続と遺贈は別の制度!

まず、原則論を言うと、相続放棄をしても遺贈や死因贈与を受けることは可能です。遺贈とは遺言によって相続財産を特定の人に分与することであり、死因贈与とは、死亡を原因として特定の人に特定の相続財産を贈与する契約ですが、これらは、相続とは別個の制度です。このことは、遺贈や死因贈与の対象者が相続人に限定されないことなどからしてもわかります。

そうだとすると、遺贈や死因贈与によって高額な財産を特定の人に受け渡しながら、一方では相続人が相続放棄によって借金を免れるということが可能になりそうです。

認められない可能性が高い

しかし、このようなことは、認められない可能性が高いです。ここで1つ、参考になる裁判例があります。

そのケースでは、死因贈与によって不動産を譲り受けた相続人が限定承認をしたとき、相続債権者に対して不動産の所有権取得を対抗することができないと判断されました(最判平成10年2月13日)。裁判所は、限定承認によって借金を免れながら、不動産だけを贈与されたと主張することが信義則違反になると言っています。

この趣旨からすると、相続放棄のケースや遺贈のケースでも、同じようなことが言えるため、相続人は相続債権者に遺贈や死因贈与を対抗できないと判断される可能性があります。

詐害行為として取り消される可能性もある

また、この場合、詐害行為取消も問題になります。詐害行為取消とは、債務者が債権者を害することを認識しながら財産処分をしたときに、債権者がその法律行為を取り消すことです。たとえば、借金している人が無資力なのに、唯一の財産を友人に無償で贈与したケースなどに詐害行為が成立します。このとき、友人への贈与を認めたら、唯一の資産がなくなって借金が返ってくる可能性が低くなるので、債権者がその贈与を取り消すことができます。

この考え方を、相続放棄の場面でも適用します。債務者が無資力であり、財産を遺贈ないし死因贈与したら債権者が害されることを知りながら遺贈や死因贈与をした場合には、詐害行為となるので、相続債権者はそれを取り消すことができるのです。

以上のように、「借金は相続放棄して、遺贈や死因贈与によってプラスの資産だけもらう」というムシの良い考えは通用しません。遺産相続をするときには、借金を支払って相続をするか、借金もプラスの遺産も相続をしないかのどちらかを選ぶ必要があります。

相続放棄で不利益を受けないためには弁護士相談がベスト!

以上のように、借金を相続しない方法には、相続放棄と限定承認がありますが、どちらが良いのかはケースバイケースです。自分の状況に応じて選ばなければなりません。また、他の相続人が相続放棄したかどうかを知りたい場合には、家庭裁判所に相続放棄の照会をすることが可能ですし、その手続きを弁護士に依頼することもできます。相続放棄をしながら、一方では遺贈を受けようとしても、信義則違反や詐害行為取消によって失敗する可能性が高いです。

このように、相続放棄には、一般の人が知らない問題点がたくさんあります。単純に「借金をなくしてもらうための制度」という考えをしていると、予想していなかった不利益を受けるおそれがあるので、適切に対処するためには、相続問題に強い弁護士のアドバイスをもらうべきです。

遺産の中に借金が混じっていて対処方法に迷ったら、まずは無料相談などを利用して弁護士に相談しましょう。

都道府県から相続弁護士を探す
北海道・東北地方 北海道青森岩手秋田宮城山形福島
関東 東京埼玉神奈川千葉茨城栃木群馬
北陸・甲信越 新潟山梨長野石川富山福井
東海 愛知静岡岐阜三重
関西 大阪京都奈良兵庫滋賀和歌山
中国・四国 広島岡山山口鳥取島根香川徳島愛媛高知
九州 福岡熊本大分宮崎佐賀長崎鹿児島沖縄
遺産相続問題は弁護士に相談すべき

相続問題でこんな悩みを抱えていませんか

  • 相手がすでに弁護士に依頼している
  • 遺産分割の相続の話し合いがまとまらない。顔を合わせたくない。
  • 遺産を使い込まれているが、どうすればいいの?
  • 遺言書に自分の名前が書かれておらず、自分の相続がなくなった。
  • 相続について、どうしていいのか分からない。

1つでも当てはまるなら、すぐに相談しよう

遺産相続に強い弁護士を探す
【相続弁護士に依頼する前にチェック!】
相続について知る
遺産相続を弁護士に依頼する前にチェック
相続分野の弁護士費用相場
遺産相続を弁護士に依頼するメリット
弁護士に相談するタイミング
相続に強い弁護士の選び方
相続を弁護士に相談・依頼する流れ

ご相談状況

  • 電話窓口:通話無料
  • 弁護士:157事務所
  • 相談件数:4,000件 突破

【注目】遺産相続に強い弁護士

相続問題に注力する弁護士が多数在籍、依頼者の利益を最大化
弁護士法人ALG&Associates
弁護士法人ALG&Associates

相続問題に注力する弁護士が多数在籍、依頼者の利益を最大化

遺産相続弁護士相談広場は、遺産分割や遺言書作成でお悩みの方のための情報ポータルサイトです。遺産相続関連のコンテンツを掲載し、皆様のお役に立てるWEBサイトを目指しております。納得のいく解決を迎えるためには弁護士に相談し、介入してもらうことでその後のトラブルが防げ、円満解決できる可能性が高まります。

【運営】株式会社Agoora 〒166-0003 東京都杉並区高円寺南4-7-1-302 TEL:03-5929-7575
© 2014 Agoora.inc.

TOP