生活費の仕送りに贈与税はかかる?別居の親子間で送金する場合の注意点

仕送りのイメージ親から子どもへ生活費の仕送りをするとき、贈与税は発生するのでしょうか?実はどのくらいの金額を送金するかによって、贈与税がかかるかどうかの結論が変わってくる可能性があります。思わぬ税金がかかって不利益を受けてしまわないように、生活費の送金で贈与税がかかるケースとかからないケースについて、みていきましょう。

生活費の仕送りには贈与税がかからないケースがある!

贈与税は、財産の贈与を受けたときにかかる税金です。何らかの価値のある財産を無償で譲り受けたら、基本的に贈与税が発生すると考えましょう。生活費も「お金」という価値のある財産なので、仕送りをすると基本的に贈与税が発生しそうに思われます。

しかし生活費の送金は法律上の義務にもとづくケースも多く、金額も高額ではないのが通常です。
たとえば大学生に毎月5万円ずつ送金する場合や別居の妻に毎月婚姻費用を送金するケースなど。こういった事案にまで逐一贈与税を課すると、国民にとって過大な負担となってしまうでしょう。
そこで「例外的に贈与税がかからない」ルールがもうけられています。

以下で生活費の仕送りによって贈与税がかかるケースとかからないケースの区別をみていきましょう。

生活費仕送りで贈与税がかからない範囲

扶養義務にもとづく場合

国税庁によると、

夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの

については贈与税がかからないとされています。

国税庁ホームページ|No.4405 贈与税がかからない場合

つまり法律上の扶養義務にもとづいて生活費の送金をするときには、それが通常必要とされるものである限り贈与税がかかりません。
法律上の扶養義務が発生するのは、以下のようなケースです。

子どもの養育費

親が離れて暮らす未成年の子どもの養育のために負担すべき費用です。

夫婦の婚姻費用

夫婦が相互扶助義務にもとづいて請求できる生活費です。別居している場合はもちろんのこと、同居していても婚姻費用を請求できます。

親族間の扶養義務

配偶者、直系血族や兄弟姉妹、生計を一にしている3親等内の親族は互いに扶養義務を負います。

※3親等内の親族には、以下のような人が含まれます。
父母、祖父母、曾祖父母、子ども、孫、兄弟姉妹、配偶者、甥姪、叔父叔母
配偶者の父母、祖父母、曾祖父母、配偶者の兄弟姉妹や甥姪、配偶者の叔父叔母など

こうした法律上の要請によって支払われる生活費は、受け取り側が生活を送る上で「通常必要とされるもの」であれば、贈与税を払う必要がありません。

生活費として「通常必要とされるもの」の範囲

扶養義務にもとづいて支払われる生活費は「通常必要とされるもの」でなければなりません。「通常必要とされる」というのはどういったケースをいうのでしょうか?

日々の生活費

食費や住居費、交通費、衣類関係のお金など、日々の生活にかかるお金であれば通常必要とされるものに該当します。

介護施設の料金、病院代

要介護状態となった親の介護施設入所費用や毎月の費用、病院に支払う入通院費用などのお金も、通常必要とされる生活費に該当します。

同居か別居かは関係ない

生活費の仕送りが贈与税の対象かどうか判断をするとき、親族同士が「同居しているか別居状態か」は考慮されません。
離れて生活している親や義両親、甥姪などであっても、毎月生活に必要なお金を送っていれば「生計を一にしている」と認められます。
こういった生活費の送金には贈与税はかからないと考えましょう。

生活費の金額の上限は?

扶養義務にもとづく生活費として贈与税の対象にならないために、送金額の上限があるのでしょうか?

贈与の対象になるかならないかは、「〇〇円以下」などの金額によって決まるものではありません。高額であっても「生活に通常必要とされるもの」であれば贈与税がかかりませんし、低額でも「生活費ではないもの」であれば贈与税が発生します。

たとえば親が介護施設へ入所するとき、施設から請求されて数百万円の費用を負担しても贈与税はかからない可能性が高いといえます。
一方で、子どもに10万円送金した場合であっても、それが預貯金や投資にまわす目的であれば贈与税の課税対象になります。

ただし生活費の送金といっても、あまりに金額が過大であれば「通常必要とされるもの」とはいえないので、贈与税がかかる可能性があります。
たとえば子どもの生活費のために毎月200万円送金した場合には、一定以上の部分は課税対象となるでしょう。

贈与税の基礎控除の範囲内のケース

生活費を送金するとき、贈与税がかからないのは「扶養義務にもとづく通常必要な範囲の生活費」となる場合。この条件を満たさない限り、贈与税がかかるのが原則です。
ただし「贈与税の基礎控除」の範囲内であれば贈与税がかかりません。

贈与税の基礎控除とは、「年間110万円までの贈与分には贈与税がかからない」というルールです。受贈者1人につき、贈与額が1年に110万円以下であれば贈与税を払う必要はありません。

たとえば贅沢品の購入目的や投資目的であっても、金額が年間110万円以下であれば贈与税は発生しないと考えましょう。

扶養義務者以外からの贈与が非課税になる場合

扶養義務者以外の人からお金を受け取ると、基本的には贈与税がかかります。
ただし以下のようなものは非課税となっているので、贈与税申告の必要はありません。

  • 入学祝い、結婚祝い、出産祝いなどのお祝儀
  • お見舞い金、香典などの弔慰金

贈与税を発生させない生活費の送金方法

生活費を送金するとき、贈与税の課税対象にならないためにはどういったことに注意すればよいのでしょうか?
このとき重要なのは、「必要なときに、その都度必要な金額」を送金することです。
まとめ払いをすると、「通常必要な範囲」を超えるとして贈与税がかかる可能性が高くなります。

たとえば以下のように対応すると、贈与税の課税対象にはならないでしょう。

  • 大学生の子どもに生活費の仕送りをするとき、住居費や衣食住にかかる費用として「毎月10万円ずつ」支払う
  • 大学の学費を送金するとき、学校へ支払うタイミングで大学から請求されている金額をそのまま送金する(たとえば前記の学費が70万円なら70万円のみ送金)
  • 親が介護施設に入居する場合、入居に必要な金額を入居直前に送金する(たとえば入居費用が500万円なら、支払うタイミングで500万円を送金)

反対に、以下のように一括でまとめて高額な金額を支払ってしまうと贈与税がかかる可能性が高くなります。

  • 大学生の子どもに年間の生活費としてまとめて120万円を送金
  • 4年分の学費をまとめて600万円送金
  • 介護施設に入居することが決まっていないのに、「将来の入居時に備えて」事前に500万円を送金

「必要なときに必要な金額のみ」を送金するというルールを守っていれば、通常は贈与税がかからないと考えられます。

生活費として受け取ったお金の使い道にも要注意

生活費として受け取ったお金は、「生活費」に使わねばなりません。
無関係な目的に利用すると「生活費の送金」とは認められないので贈与税の課税対象になる可能性があります。たとえば以下のような場合が問題となりやすいので注意してください。

受けとったお金を貯蓄にまわす

子どもへ送金するとき、実際には生活に必要ではないので貯蓄に回すと、少額であっても贈与税の課税対象となる可能性があります。

受け取ったお金を投資にまわす

子どもや配偶者へ生活費として送金しても、実際には株式投資や不動産投資の購入資金などに使うと贈与税がかかる可能性が高くなります。

遊興費や生活費の範疇を超えたぜいたく品の購入資金にする

受けとったお金を生活費の範疇を超えた海外旅行や高額な飲食費、車やブランド物の購入費用などに充てていると贈与税がかかる可能性が高くなります。
生活費を受け取った場合には、基本的に全額を生活費に使うようにしましょう。

贈与税になる?ならない?モデルケースで理解しよう

生活費の送金で贈与税がかかるケースとかからないケースについて、具体例を示します。

子どもの生活費を毎月送金

学生や独身の子どもに生活費を送金する場合、子どもに生活力がなければ毎月15万円や20万円程度の生活費を送金しても贈与税は発生しにくいといえます。

一方で子どもが充分に稼いでいて生活費の仕送りが不要なのに毎月20万円送金していたら、贈与とみなされる可能性が高くなります。

また学生や無職の子どもであっても「毎月100万円」などの高額な仕送りをして贅沢品の購入などにお金を使われたり貯蓄、投資に回されたりしたら、贈与税がかかると考えましょう。

親へ生活費を送金

年金生活の親へ毎月の生活費を送金するケースでは、たとえば年金が6万円あるので、不足する分として毎月10万円ずつ送金する場合には問題は生じません。

一方で病気や介護を必要とする状態でもないのに毎月50万円を送金したり、年払いの一括で200万円を送金したりすると問題になる可能性があります。

親の介護費用を送金

親の介護費用を送金する場合、介護施設にかかる金額を毎月支払うなら問題ありません。

一方で施設にかかる金額が10万円で基本的に生活をまかなえるのに「生活に余裕があった方がよいだろう」などと考えて毎月50万円、70万円などを送金すると贈与税がかかる可能性があります。

まとめ

生活費の仕送りは、基本的に「生活に必要な分」しか非課税になりません。生活の範囲を超えた送金をすると、贈与税の基礎控除の範囲内でない限り贈与税がかかると考えましょう。「毎月の生活費」であっても、常識的な範囲を超えた金額を渡せば贈与税の課税対象となる可能性が高くなります。
将来、相続税がかかる可能性が高いご家庭では「生活費送金」の名目で子どもや孫世代に高額な財産を受け継がせるのは困難といえるでしょう。

相続税を節税したいなら、贈与税の控除制度を使った生前贈与などの対策を検討する必要があります。対応に迷ったときには税理士などの専門家に相談してみてください。

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