相続人が行方不明で連絡が取れない場合はどうする?

音信不通

遺産分割協議は基本的に相続者全員の合意がないと行うことができません。しかし、相続人に音信不通の人や行方不明者が含まれていることが判明した場合でも、裁判所へ申立てを行うことより遺産分割協議をそのまま進めることが可能です。どのような手続きをとればよいのか、またその際の注意点について説明します。

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相続人と連絡が取れない場合は弁護士に相談を

相続人と連絡が取れない、どこにいるのかもわからない場合は弁護士に相談することをおすすめします。そのような関係性の場合、相続で揉める可能性も高いためその後の交渉まで依頼することが可能です。
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遺産分割協議による相続の手続き

遺産相続のとき、遺言書があってその法的効力が認められた場合は、原則的に遺言書通りに遺産分割が行われますので相続人の同意は必要ありません。ただ申告された相続財産のうち半数近くが不動産であるため、遺言書がある場合でも財産分与は遺産分割協議により行われることが多いのが現実です。

遺産分割協議とは

民法では、遺言書がない場合でも各相続人の遺産割合として法定相続分を定めています。しかし、財産が現金のみの場合でも、原則的に法定相続分に近い内容で遺産分割協議書を作成するが必要があります。

遺産分割協議について

遺産分割協議とは、被相続人の財産を各相続人でどう分けるかについて話し合うことです。相続人全員の合意があれば、法定相続分とは異なる割合で自由に分割することができます。

また、遺言書があった場合でも、相続人全員が合意した場合には、遺産分割協議により遺言書で指定されている内容と異なる方法で遺産分割をすることも可能です。

遺産分割協議の手続き

遺産分割協議を行うにあたり、まず相続財産の調査、法定相続人を確定する必要があります。その後、相続人全員で遺産分割協議に入ります。

遺産相続までの流れ

  1. 相続財産の調査、把握
  2. 法定相続人の確定
  3. 相続するのかしないのかの選択(単純承認か限定承認、または相続放棄)
  4. 遺産分割協議(相続人全員で遺産の分割の仕方を話し合い)、遺産分割協議書の作成
  5. 各種の名義変更、役所等への申請手続き
  6. 必要であれば相続税の納付

法定相続人を確定するには

被相続人(亡くなった人)の関連する戸籍を全て調べ、法定相続人を確定させることは大変重要な作業です。転籍(本籍地を移転すること)を繰り返していた場合など、時にその調査が困難なことが多々あります。調べていくにつれ、初めて相続人の存在を知ることもあります。

法定相続人とは

法廷相続人とは、被相続人が保有していた財産を相続する権利がある人であり、この権利は法律で定められています。被相続人の配偶者の有無、子どもの人数などによって相続人の範囲や配分も決まります。

法定相続人を調べるには

出生から死亡までの戸籍謄本 法定相続人は、生まれてから亡くなるまでの全ての戸籍謄本(除籍謄本や改製原戸籍)を調査することによって確定します。最終本籍地から一つずつ遡り、出生まで本籍地のあった戸籍をそれぞれの市町村に申請します。その中で子どもの数や名前、養子の有無などを調べ、もしも子供がいない場合は、父母や祖父母、兄弟姉妹の戸籍を調べていきます。
戸籍の付票 相続の際、相続人全員の戸籍謄本を取得する必要があります。被相続人の戸籍上であらたな相続人が判明した場合、その戸籍謄本と供に戸籍の付票も取得することにより、住所を把握し相手に連絡をすることができます。

戸籍謄本や付票の取得は郵便による申請も可能です。

相続人が行方不明の場合は

相続人が音信不通で連絡が取れない場合や、行方不明で生死がわからない場合はどうすればよいのでしょうか。相続人がたとえ行方不明であっても、生きている限りは相続の権利を持っているためその人を除いて遺産協議を進めることはできません。

行方不明の場合、大きく分けて二つのケースがあります。

所在がわからない場合:不在者財産管理人を選出

戸籍を調べたら相続人の存在が判明したけれど、付票の住所に手紙を出しても返信がなく連絡がつかない、家を出たきり音信不通である場合など所在がわからない場合は、不在者財産管理人を選出します。

不在者財産管理人とは

不在者財産管理人とは、行方不明の相続人に代わって財産を管理する人です。不在者財産管理人は、財産目録を作成して家庭裁判所に報告書を提出するなど、あくまでも財産管理を行うことが責務であり、基本的に遺産分割協議に参加することは出来ません。
また遺産分割協議が終了しても、行方不明の人が現れるか死亡が確認されるまで不在者財産管理人としての責務があります。

不在者財産管理人を選出するには

相続人などの利害関係者は、行方不明者が住んでいた住所地を管轄する家庭裁判所に「不在者財産管理人選任の申立書」を不在者や申立人の戸籍謄本と不在の事実を証明する資料等と供に提出します。
家庭裁判所は書類を確認し利害関係を考慮した上で、不在者財産管理人を選出します。

不在者財産管理人には誰がなる?

不在者財産管理人の候補者を申立書に記載することもできますが、遺産分割協議を行う他の相続人を指定することはできません。
多くの場合は行方不明人と利害関係がない人物か、弁護士や司法書士を候補者にします。

不在者財産管理人が遺産分割協議に参加するには

不在者財産管理人は基本的に財産管理のみを行いますが、家庭裁判所に「権限外行為の許可」を申請することにより遺産分割協議を行うことができます。遺産分割協議書に合意したら、行方不明人に代わり署名捺印をします。

生死不明の場合:失踪宣告の申立て

相続人となる人が何年も前に家を出たきり消息が不明である場合や、事故や災害などで生きているかどうかもわからない場合、失踪宣告の申立てを行います。

失踪宣告とは

行方不明者が行方不明の場合は行方不明になったときから7年間、災害や遭難などの危難で生死不明の場合は危難が去ってから1年間経過したときは、行方不明者は法律上において死亡したものとみなされます。

失踪宣告申立ての手続き

失踪宣告の申立ては、不在者財産管理人選任の申立てと同様に、利害関係者が行方不明者の住所地を管轄する家庭裁判所に申請します。
ただし、失踪宣告の手続きには時間がかかります。申立てが行われると、家庭裁判所は「不在者(相続人)捜索の公告」を官報などに掲載します。通常は申立てをしてから失踪宣告されるまでに1年~1年半ほどかかります。

相続人が行方不明の場合、遺産相続手続きを進める際の留意事項

相続人が行方不明の場合、遺産分割協議を進めるための手続きを解説してきました。その中で事前に理解しておいた方がよいと思われる留意事項があるのでみていきましょう。

不在者財産管理人を選出する場合

行方不明の不在者に代わり財産を管理する不在者財産管理人を選任することにより、遺産分割協議を進めることができますが、金銭面や遺産分割の内容について注意点があります。

財産管理には費用が発生することも

家庭裁判所に対し不在者財産管理人選任の申立てをする際、管理費用として予納金が発生する場合があります。事案によっても異なりますが、弁護士が管理人となる場合、その金額は数十万円程度となります。

法定相続分を下回る遺産相続は認められない

行方不明の相続人が不当な不利益を受けないように配慮するため、その相続人の取り分法定相続分を下回るような内容の遺産分割協議案に対しては、裁判所は原則として許可をしません。
したがって、共同相続人は行方不明の相続人が不法定相続分相応の財産を取得する遺産分割協議をまとめる必要があります。不在者財産管理人は、行方不明者が現れるまで取得した遺産を預かります。

失踪宣告の申立てを行う場合

裁判所より失踪宣告を受けることにより、行方不明者を除いた相続人で遺産分割協議を進めることができるようになりますが、相続にあたり確認しておくべき事項があります。

失踪宣告を受けるまでに時間がかかる

前述のとおり、申立てをしてから失踪宣告されるまでに1年ほどかかるため、相続税の申告期限(死亡後10ヶ月以内)には間に合いません。よって不在者財産管理人を選任して、遺産分割協議を進める方が現実的だといわれています。

失踪者が現れた場合、相続権は復活する

失踪宣告を受けた不明者が現れ、失踪宣告の取り消しを申立て認められれば、その人の相続関係も含めた法律上の権利は復活します。失踪者以外の相続人で遺産分割をした場合、手元に残っている財産があれば返却する必要があります。

遺産相続は、様々な書類を揃え、故人の財産を調べるだけでも大変な時間と労力をともないます。ましてや行方不明の相続人がいることが判明し、その所在を調査し手続きを行うことは困難な作業です。できるだけ手続きをスムーズに進めるためにも、遺産相続に強い弁護士に依頼することをおすすめします。

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