自筆証書遺言の書き方マニュアル~遺言書の例文ひな形と準備・作成のポイント

自筆証書遺言

自筆証書遺言は、他の2つの遺言(公正証書遺言・秘密証書遺言)と違って証人が不要です。費用もかからないため一番多く利用されていますが、記述内容に不備があったり形式が間違っていたりすると無効になってしまうリスクもあります。
ここでは、自筆証書遺言の書き方や作成時のポイントを解説していきます。

自筆証書遺言のひな形テンプレート

自筆証書遺言に厳密な様式はありませんが、基本のフォーマットに沿って作成すると抜け漏れしにくくなります。

一般的なひな形とともに、作成上の注意点を見ていきます。

自筆遺書
※自筆証書遺言のテンプレートファイルをダウンロードいただけます。
 実際に遺言書を準備する際は被相続人が自ら手書きで作成する必要があります。
 自筆証書遺言作成時のひな形として参考にしてください。

自筆証書遺言テンプレート ※Wordファイル(docx形式)/zip圧縮

表題(※1)

表題は必須事項ではありませんが、遺言書であることを明確にするためにも書いておきます。

相続人の氏名(※2)

相続人の氏名は戸籍通りに書きます。「お母さん」「娘」などのあいまいな書き方はしません。

相続させる(※3)

推定相続人に財産を遺すことは、「相続させる」とはっきり書きます。「渡す」「譲る」「引き継ぐ」「取得させる」「受けとらせる」などのあいまいな表現は避けましょう。

不動産の記載(※4)

不動産は土地と建物を分けて物件を特定できるようにします。現住所地ではなく、登記簿謄に記載されている通りに書きます。遺言を作成する前に登記簿を取り寄せておきましょう。

口座番号の記載(※5)

金融機関の預貯金を相続させる場合は、遺族がわかるように口座番号を書いておきます。

遺贈する(※6)

相続人ではない人(ここでは長男の嫁)に財産を遺贈したい場合、「遺贈する」と記載します。

付言事項(※7)

自分の希望などを書いておきます。また、もし相続人以外の人(長男の嫁など)に相続させたい場合は、「面倒を見てくれたから」と相続させる理由を書いておくといいでしょう。付言事項に法的な効力はありませんが、読んだ人を納得させ、トラブルを防ぐ効果があります。

日付(※8)

遺言書を作成した日を記載します。

署名・押印(※9)

署名と押印をします。

自筆証書遺言作成の流れ

遺言作成前に確認すべきこと、準備すべきことをしっかりやっておくと、作成がスムーズに進みます。ここでは、自筆証書遺言を作成する際の流れと、作成後の注意点についてみていきます。

  1. 財産を把握して内容を決める
  2. 自筆証書遺言作成に必要なものを準備
  3. 自筆証書遺言を作成する
  4. 自筆証書遺言の内容を訂正する場合
  5. 自筆証書遺言の保管

1.財産を把握して内容を決める

財産を洗い出し、遺言内容を決めます。

財産をリスト化する

まずはどのような財産があるのか、リストアップしていきます。現預金のありか、金額、不動産の評価額などを確認しながら進めます。

推定相続人の確認・相続割合の確認

推定相続人(法定相続人になる予定の人)を確認します。法定相続割合(遺言がない場合に基本となる相続割合)と、遺留分(相続人の最低限の取り分)についても確認しましょう。
これらを把握しておくことは、相続人同士が揉めにくい遺言作成にも役立ちます。

財産を遺す人(割合)を決める

相続財産と、推定相続人を把握出来たら、実際に財産を遺す人を決めます。「誰に何をどれくらい遺すのか」「どれくらいの割合で遺すのか」「相続人以外に遺贈するか」などです。

遺言執行者を決める

必須ではありませんが、遺言書の内容に沿って実際の手続きをする「遺言執行者」に指定する人を決めておくと安心です。

2.自筆証書遺言作成に必要なものを準備

自筆証書遺言の内容が決まったら、自筆証書遺言作成に必要なものを準備します。

  • 用紙
  • 筆記用具
  • 印鑑
  • 封筒
  • 通帳・取引明細書など
  • 生命保険証書
  • 不動産の登記簿

遺言書を書く用紙・書式に指定はある?

自筆証書遺言を書く紙は、どんなものでも構いません。コピー用紙、便箋、ルーズリーフなどはもちろんのこと、チラシの裏に書いても有効です。

チラシの裏、蛍光ペンや鉛筆書き…いい加減な作りはトラブルの元に

ただし、チラシの裏に書いてあったり、メモのような書き方だったりすると、無効だと主張する相続人がでてくるかもしれません。
トラブルを避けるためにも、変色したり破れたりしにくい紙を使用することをおすすめします。
改ざんされないよう、筆記用具も消えないものを選びます。
市販されている遺言書専用の用紙・封筒セットを利用してもよいでしょう。

財産目録はパソコン作成も可

相続財産の数や種類が多い場合、遺言書に財産目録をつけることで遺言書作成が楽になります。
遺言書は遺言者本人が手書きしなければなりませんが、財産目録はパソコンで作成することができますし、代筆も認められます。
これは平成31年1月13日施行の民法改正によるもので、改正より前に作成した財産目録は、自筆以外は無効です。

財産目録の代わりに登記簿謄本や通帳のコピーもOK

財産目録を作成する代わりに、「不動産全部事項証明書(登記簿謄本)」や「通帳のコピー」などを添付することもできます。

通帳のコピーの上部に「財産目録第1」と記載し、遺言本文に「別紙財産目録1記載の財産を〇〇に相続させる。」などと記載します。

自筆によらない財産目録へは署名・押印が必要

パソコンや代筆によって作成された財産目録へは、署名・押印が必要です。通帳のコピーなども同様です。各ページに署名・押印しなければいけませんので注意しましょう。

参考:財産目録を添付するケースのサンプル

遺言書サンプル
法務省ホームページ参考資料PDFより引用

遺言本文はすべて自筆する必要があります。

財産目録サンプル
法務省ホームページ参考資料PDFより引用

財産目録については、署名部分以外は自筆でなくても認められます。ただし署名押印が必要です。遺言本文と異なる印鑑を用いても認められます。

自筆証書遺言の制度や法改正については、次の記事で詳しく解説しています。

3.自筆証書遺言を作成する

実際に自筆証書遺言を作成する際は、フォーマット通りでなくても大丈夫です。ただし次のポイントは必ず押さえておく必要があります。

財産目録以外はすべて自筆する

自筆証書遺言は遺言者本人の手書きでなければなりません。配偶者などであっても代筆は許されません。
一部でも他人が代筆すると、遺言書は無効となってしまいます。病気などのリスクを想定して元気なうちに書いておくことをおすすめします。

遺言を録音したテープや録画なども無効です。必ず書面で残しましょう。

署名する

自筆での署名は必須です。本名をフルネームで記入します。
遺言者が特定できる場合はペンネームでも可能とされていますが、トラブルや誤解を防ぐためにも戸籍通りの姓名を記載する方がよいでしょう。

押印する(実印でなくてもよい)

押印も必須です。押印は認印でよいとされています。

日付を入れる

遺言書を作成した年月日を、必ず記載します。
「○年1月吉日」といった書き方は日付を特定できないため、無効です。

4.自筆証書遺言の内容を訂正する場合

自筆証書遺言の内容を変更したい場合は、新たに遺言を作成すれば古い日付のものは無効になります。

遺言内容の一部だけを訂正したいような場合には、訂正(削除)したい箇所に二重線をひき、押印します。正しい方法で修正しないと、無効になってしまいますから注意しましょう。

参考:遺言の一部を訂正するケースのサンプル

遺言書を修正する場合(サンプル)
法務省ホームページ参考資料PDFより引用

5.自筆証書遺言の保管

作成した遺言書は、封筒に入れます。封筒の表に「遺言書」と記載し、裏に日付と名前を記入してください。
さらに「本遺言書は、私の死後、開封せずに家庭裁判所で検認を受けてください」などと書いておくとベストです。

封印しておくことで偽造や変造のリスクが減ります。
ただし、自筆証書遺言書保管制度を利用する場合には、法務局が中身をチェックしますので封はしません。

また、遺言書の保管は、紛失の心配がなく、発見されやすい場所にします。
弁護士などの法律の専門家に保管を依頼することも可能です。

家庭裁判所で検認が必要

公証人が確認して作成する公正証書遺言と違い、自筆証書遺言は法律上有効に成立したかどうかの確認がされていません。
遺言を確認する際には、遺言が有効なものかどうか、偽造されていないかなどを確認する必要があります。これを「検認」といい、遺言を見つけた人は、家庭裁判所で検認をしてもらうことが必要です。

わかりやすい自筆証書遺言の書き方

相続人が遺言を確認したとき、遺言内容が不明瞭だと相続人同士で揉めてしまうかもしれません。
わかりやすく、トラブルになりにくい自筆証書遺言の書き方のポイントをみていきます。

正確に詳しく書く

遺言の内容は正確に書きます。配偶者に自宅を相続させたい場合、「妻に家を相続させる」と書けば伝わる気がしますよね。しかし遺言には、他人にもわかるように正確に細かく書かなければなりません。

妻に不動産を相続させるケースの文例サンプル

・妻 〇〇に次の財産を相続させる。
(1) 土地
所在:神奈川県横浜市○○町1丁目
地番:3番5
地目:宅地
地積:200平方メートル
(2)建物
所在:同所1丁目3番5
家屋番号:3番5
種類:居宅
構造:木造瓦革2階建
床面積:1階 80平方メートル  2階 60平方メートル

具体的に書く

遺言の内容は具体的に書きます。
例えば、預金を相続させるときには、銀行名・支店名・口座番号・名義もすべて書きます。

ただし、預金額は具体的には書きません。実際に相続が発生するまでの間に残高が変わる可能性があるためです。

長男に定期預金を相続させるケースの文例サンプル

・長男 〇〇に次の財産を相続させる。
○○銀行△△支店の遺言者名義の定期預金 (口座番号〇〇〇〇〇〇) すべて

遺留分に配慮

特定の相続人だけに多くの財産を相続させる場合、他の相続人によって遺留分を請求されてしまうリスクが高まります。遺留分は兄弟姉妹以外の相続人が持つ最低限の取り分で、遺言でも請求権は奪えません。

遺留分を請求されてトラブルになるようなことを避けるためには、他の相続人にも遺留分相当の財産を相続させるか、遺留分相当を相続させない理由を遺言で説明する方法があります。

祭祀承継者の指定

お墓などの祭祀財産は他の相続財産とは分けて考えますので、遺言で承継者を指定するとトラブルになりにくいです。

長男を祭祀承継者に指定するケースの文例サンプル

・遺言者は先祖の祭祀を主宰すべき者として、長男 〇〇を指定する。

遺言執行者の指定

遺言で子の認知や相続廃除をする場合には、遺言執行者が必要です。それ以外のケースでも遺言執行者がいることで遺産分割手続きをスムーズに進められ、相続人の負担が減るというメリットがあります。

破産者と未成年者以外は遺言執行者になることができ、相続人や法人を指定することも可能です。

自筆証書遺言シチュエーション別・文例サンプル

自筆証書遺言に記載すべき内容は、家族構成や遺言の目的によってさまざまです。ここでは、シチュエーションごとの文例サンプルをご紹介します。

独身の方の場合

子供のいない独身の方、いわゆるおひとりさまの場合、直系尊属(父母・祖父母)、兄弟姉妹(または甥姪)が法定相続人になります。
優先順位が決まっており、直系尊属が健在なら直系尊属が法定相続人に、直系尊属がいない場合は兄弟姉妹が法廷相続人になります。兄弟姉妹が死亡している場合は、甥や姪が代襲相続します。

おひとりさま(子も孫も配偶者もいない)の法定相続人
優先順位 法定相続人になる条件 法定相続人
1直系尊属 父母
父も母もいない 祖父母
父母・祖父母がいない 曾祖父母
2兄弟姉妹 直系尊属が誰もいない 兄弟姉妹
兄弟姉妹のいずれかが既に死亡 甥姪(代襲相続)

おひとりさまの相続では、誰が法定相続人となるかにかかわらず、指定した人に財産を遺したいという場合も多いでしょう。
両親や兄弟姉妹が健在でも甥や姪に直接財産を遺したいという場合、甥や姪は法定相続人ではありませんから、遺言には「遺贈する」と記載します。

甥に財産を遺贈するケースの文例サンプル

・遺言者は一切の財産を、遺言者の甥〇〇に遺贈する。
・遺言者は先祖の祭祀を主宰すべき者として、遺言者の甥〇〇を指定する。

遺言者が祭祀主催者である場合は、お墓の管理などについて揉めないよう、祭祀承継者を指定しておくとよいでしょう。

お世話になった第三者や団体への遺贈や寄付を行うこともできます。

財産を第三者へ寄付するケースの文例サンプル

・遺言者は、一切の財産を下記の団体に遺贈する。
 名称:〇〇
 所在地:〇〇県〇〇市〇〇町〇〇丁目〇〇番地〇〇

ただし、法定相続人がいるのに第三者に遺贈を行うと、遺留分を巡りトラブルになる可能性があるため、配慮して決めるようにしましょう

子供なしの場合

子供がいない夫婦のどちらか一方が亡くなると、配偶者とともに両親や兄弟姉妹などが相続人になる場合があります。配偶者に全財産を遺したい場合はその旨を遺言に記載します。

妻に全財産を相続させるケースの文例サンプル

・遺言者は一切の財産を、妻〇〇に相続させる。
・遺言者はこの遺言の遺言執行者として妻〇〇を指定する。

妻と兄弟姉妹が相続人になった場合、兄弟姉妹には遺留分がありませんから、このような遺言があれば、妻が全財産を相続できます。
相続手続きがスムーズに行えるように遺言執行者を指定しておくとよいでしょう。

特定の一人に相続させたい

子供が複数いても、特定の1人に相続させたいことはあるでしょう。他の相続人に遺留分の請求をされたくない場合には、付言事項にその理由を記載する方法があります。

長女に全財産を相続させるケースの文例サンプル

・遺言者は一切の財産を、長女〇〇に相続させる。
・付言事項
 遺言者が一切の財産を長女〇〇に相続させた理由は、遺言者の妻〇〇と同居し面倒を看てもらうためである。他の相続人が、遺留分侵害額請求権を行使しないことを望む。

付言事項には、法的効力はありません。しかし理由がわかれば他の相続人も納得し、スムーズな相続になることが期待できます。

遺言書における「一切の財産」とは

「一切の財産」とは、不動産などを含む遺言者の財産すべてを含みます。遺言者のすべての財産を1人へ遺す場合に記載しておくと、遺言書作成時に把握しきれなかった預貯金や不動産などもすべて取得させることができます。

法務局による自筆証書遺言書保管制度

自筆証書遺言書は自宅等で保管されることがほとんどです。そのため紛失や隠匿、改ざんのリスクがあり、これによって相続争いが起こってしまう恐れがあります。

これらの問題に対応するために、令和2年7月から自筆証書遺言書保管制度が開始されました。この制度を利用すると遺言書を法務局で保管してもらえ、家庭裁判所での検認が不要になります。

自筆証書遺言書保管制度を利用する場合の遺言書の作成方法

自筆証書遺言書保管制度を利用する際は、A4サイズの用紙を使用し、裏面には何も記載してはいけません。他にも注意事項がありますので、詳しくは法務省の公式サイトでご確認ください。
また、法務省では様式例をダウンロードできるよう公開していて、プリントアウトして使用できます。
【ご参考】06:自筆証書遺言書の様式について(法務省ホームページ)

法務局がチェックするのは書類の形式のみ。内容が不備なら遺言書は無効に

ただし、遺言書の内容について適正かの確認を受けられるわけではないことに注意しましょう。遺言書のチェックはしてくれますが、署名があるかなどの形式面の確認になります。
自筆証書遺言書保管制度を利用しても、不備などにより遺言書が無効になる可能性があるということです。

自筆証書遺言書保管制度を利用する場合でも、その内容は弁護士などの専門家へ相談して作成すると安心です。

まとめ

自筆証書遺言は気軽に書くことができる一方、記載事項などが法律で厳密に定められています。せっかく書いた遺言書が無駄にならないためにも、遺言書を作成する際には遺産相続に強い弁護士に相談してアドバイスを受けることをおすすめします。

遺産相続に強く評判の良い弁護士事務所を探す

遺産相続

相続問題で悩みを抱えていませんか

  • 相手がすでに弁護士に依頼している
  • 遺産分割の話し合いがまとまらない
  • 遺産を使い込まれているがどうすれば?