遺言書の内容に左右されずに相続できる遺留分|トラブルは弁護士に相談しましょう

遺言書の内容に左右されずに相続できる遺留分

遺言によって相続分を侵害されても、相続人は遺産のうち一定の割合を相続できることが民法により保障されています。これを遺留分といい、相続人が共同相続人に対し「遺留分侵害額請求(旧:遺留分減殺請求)」を行うことによって請求できます。今回は、相続人が最低限得られる相続分を保障する遺留分の請求方法やその際の注意点についてみていきましょう。

遺産相続の種類と流れ

遺産相続の相続分には、被相続人が遺言によって指定できる「指定相続分」と遺言書がない場合に用いる民法で定められた「法定相続分」があります。遺言書の有無によって、その後の手続の流れも異なります。

遺言書がある場合の指定相続分とは

被相続人は、生前遺言書を作成することによって財産の相続分を自由に決めることができます。この遺言書による相続分を指定相続分といいますが、相続人には最低限得ることのできる「遺留分」が民法で定められています。

指定相続分とは

被相続人は、財産を譲る相続人や相続人毎の相続分の割合を遺言書に記載することで、財産分与の方法を指定できます。この遺言により指定される相続分を指定相続分といいますが、被相続人の意思が尊重される一方で、特定の人にだけ有利になったり、法定相続人が遺産を相続できないという事態が生じるケースもあります。

法定相続分とは

被相続人による指定相続分以外に、民法では法定相続人が相続する遺産の割合を定めています。これを法定相続分といいますが、遺言書で指定相続分が決められている場合には、そちらが優先されることになっています。

遺言書がある場合とない場合にするべきこととは

被相続人が亡くなると同時に遺産相続がスタートしますが、遺言書がある場合とない場合とでは、その後の遺産相続手続の流れが変わります。どちらの場合についても把握しておきましょう。

遺言書がある場合には検認を申立

遺言書を発見したら、相続人は家庭裁判所に「検認」の申立てを行います。検認とは、遺言書が存在すること及びその遺言書が本当に被相続人によって作成されたものであることを確認する手続です。検認をせずに遺言を執行すると5万円以下の過料が科せられるので注意しましょう。

遺言書がなければ相続人全員による協議を

遺言がない場合には相続人全員で遺産分割協議を行います。原則として民法で定められた法定相続分を目安に分割の話し合いを進めていきますが、相続人全員の合意が得られなければ協議は不成立に終わります。相続人の中に未成年や認知症の人がいる場合には、代理人が必要です。

遺産分割協議が揉めたら調停・審判へ

遺産分割協議で話し合いが揉めたり欠席者がいたりして相続人全員の合意が得られない場合には、「遺産分割調停」を家庭裁判所に申し立てることになります。さらに、調停でも話がまとまらない場合には審判に移行し、裁判官による判断を仰ぎます。

遺留分について詳しく知ろう

被相続人は、遺言書で相続人や相続分を自由に決めることができます。しかし、特定の相続人のみが利益を受け、他の相続人に不公平が生じる可能性もあります。このような事態を防ぐために、民法では「遺留分」という制度を定めています。

遺留分とは

被相続人が遺言書で相続人や相続分を指定していても、他の相続人には最低限得られる財産が保障されています。この取り分のことを遺留分といいますが、これは相続人の不利益を回避するために法律で定められた制度です。

遺留分は相続人に保障された権利

被相続人が遺言書で残した指定相続分は民法で定められた法定相続分よりも優先して適用されます。しかし、特定の者にのみ有利な条件となっていて他の相続人が生活できなくなるようでは、人権の侵害にもつながります。そのような事態を回避するために、民法では遺留分を保障しています。

遺留分の権利者

遺留分が認められる法定相続人は、被相続人の配偶者および直系卑属である子と孫、直系尊属である父母、祖父母のみとされています。たとえ法定相続人でも兄弟姉妹には遺留分は認められていないため注意が必要です。代襲相続の場合の甥や姪にも同様に遺留分は認められていません。

相続できる遺留分の割合

遺留分によって得られる財産の割合は、以下の通り法定相続分をもとに定められています。

遺留分によって得られる財産の割合
配偶者・子のみ 全相続分の1/2
父母のみ 全相続分の1/3
配偶者及び子 全相続分の1/4
配偶者及び父母 配偶者は全相続分の1/3、父母は1/6

遺留分侵害額請求(旧:遺留分減殺請求)

遺言書によって相続財産を減らされてしまった場合には、共同相続人に「遺留分侵害額請求」をして遺留分に相当する相続分を得ることができます。

遺留分は請求しなければもらえない

遺留分は放っておいても自動的に得られる訳ではありません。自ら共同相続人に対して遺留分侵害額請求を行う必要があります。

遺留分侵害額請求は、遺留分を侵す程の贈与や遺贈を受けた者に対して行います。一般的には、一人だけ多く遺産を譲り受けた相続人や被相続人の内縁の配偶者が該当するケースが多いでしょう。遺留分は直接相手に対して請求することも可能ですが、当事者間で話し合いが付かない場合には裁判所に申立てて請求することもできます。

遺留分問題はトラブルになりがち

さまざまな遺産相続問題の中でも遺留分はトラブルが起きるケースが多くなっています。当事者間の話し合いで揉める場合には弁護士に依頼してスムーズに遺留分を取得するようにしましょう。

遺留分を請求する際の注意点

遺留分は相続人に保障された権利ですが、請求の際にはいくつかの注意した方が良いポイントがあります。遺留分侵害額請求を行う際の参考にしてください。

時効に注意

遺留分の請求には消滅時効が存在します。
時効は原則として「遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。」(改正後民法第1048条)とされています。
被相続人が亡くなったことや遺留分が侵害されていることを知らなかった場合には、相続の開始から10年以内であれば請求が認められています。ただし、10年を過ぎると請求の権利が失われてしまうため注意が必要です。

2019年7月以前に発生した相続については遺留分減殺請求が必要

遺留分侵害額請求は、従来行われていた「遺留分減殺請求」という手続きが2019年7月1日に施行された改正民法によって刷新された手続きです。
遺留分減殺請求権は、遺留分を限度に贈与・遺贈を受けた財産そのものを返還させる「現物返還」を原則とした権利でしたが、民法改正後は、「遺留分侵害額に相当する金銭の支払」つまり財産そのものではなく、遺留分に相当するお金を請求する権利へと変更されました。

配達証明付きの内容証明郵便で

遺留分侵害額請求は、電話などを使って口頭で行うことも可能です。しかし、相手が簡単に応じるとは限らないため、「貴殿に対して遺留分侵害額の請求をいたします」というような書面を作成し内容証明郵便で送付することをおすすめします。遺留分を請求したいという強い意志が伝わるだけでなく、時効の期限内に相手に請求通知が届いた証明にもなります。

遺留分問題を弁護士に相談するメリット

お金が絡むだけにスムーズにいかないことが多い遺産相続ですが、中でも遺留分はトラブルになるケースが多いと言われています。当事者間で遺留分の話し合いが付きそうにないときは、無理せず弁護士などの専門家に依頼するようにしましょう。

メリットその1:弁護士の権限で財産の調査ができる

遺留分侵害額請求をするには、自分がどの程度の遺留分を取得できるのかを確認しておく必要があります。そのためには、被相続人がどのような財産を持っていたのかを把握しておかなければなりません。財産調査は自分で行うこともできますが、書類の申請等には手間と時間がかかります。弁護士に依頼すれば職務上の権限を利用して戸籍や住民票を取り寄せることが可能な上、財産調査にかかる負担を軽減することができます。

メリットその2:請求相手と直接話をしないで済む

遺留分を請求する相手と直接話して問題が解決すれば一番ですが、お金が絡んでいる問題だけにスムーズにはいかないケースが多いです。プロの弁護士が間に入れば、相手と直接交渉をしなくて良いため苦痛を感じずに済みます。

メリットその3:調停や訴訟に発展した時に強い

遺留分は、話し合いで相手が応じてくれない場合には家庭裁判所に調停の申立をします。さらに調停が不成立となった場合には訴訟に発展する可能性もあります。このような際にも法律の専門知識を持った弁護士に依頼すれば、調停委員や裁判官を説得できる可能性が高いでしょう。プロが自分の絶対的な味方になってくれることで精神的な負担も軽減されます。

遺留分は相続人に保障された法律上の権利です。被相続人亡き後、生活の安定を図るためにも、遺産相続に強い弁護士などの専門家に相談しながら最低限保障されている遺留分をしっかり取得できるようにしましょう。

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